奈良市西笹鉾町 |
微圧法
私の操法(整体施術法)は、どんどん変化してきています。できるだけ力をかけない方向に変化している、 と言えます。なぜかを説明しましょう。 身体は力に抵抗するある関節がどちらかに変位し(ズレ)ているとしましょう。歪みがある、といってもいいですね。 ズレを正そうとする時、誰でも思いつく 「単純」 な方法は、正したい方向に力をかけることです。 これは確かに分かりやすいため、うっかり触ると危ないところに力をかけてしまう人もいます。 例えば頭蓋骨の縫合にまで。でもこれは避けるのが望ましい。なぜか。
身体は、かかる力に反発する習性がある からです。力がかかると、できるだけ元に戻ろうとします。 どこかで頭をドーンとぶつけたとしましょう。眼に見えないほどであっても、 縫合のどこかが衝撃でズレているはずです。ズレがそのまま残るとやっかいなことになります。 頭蓋骨の中の膜や血管・神経に歪みが生じるかもしれないからです。 見て分かるほどでなくても、ミクロに見れば歪みが生じていますから、この変位を身体が元に戻そうとします。 戻れば、生じた歪みの一部は避けられるでしょうし、脳にかかる圧力も回避できることでしょう。 身体には元に戻る習性があるおかげで、正常な範囲を保っていることができている と考えられます。 血液のpH等が一定に保たれることを 「ホメオスタシス」(恒常性)といいますが、 縫合のようなミクロの変位を元に戻そうとする習性もその一部でしょう。身体のどこかを修正したいと考える場合に、 これを頭におくことが必要です。 無理に動かすのは好ましくない他の関節でも事情は同じです。だから 動かしたい方向に力を加えるのは推奨できない ことになります。 その時は変位が修正できたように見えて、後でこの変位がかえって拡大することもありえます。私の経験では、 縫合に力をかけた場合、後で逆にゆがみを拡大する結果になることがありました。 その時はいいように見えて後で怖いことになる可能性があります。 そのため例えば 「操体法」 のような、動かしたい方向とは逆の方向へ反動を利用して動かす方法が考案され、 効果を上げています。これなら、無理に動かしたい方向に動かすのではないだけに、 身体の反発を招きにくいでしょう。 ある方向に動かした時に、それが身体の望んでいる方向かどうかを判断するよい基準は、 その変化が気持ちいいかどうか、違和感がないかどうかです。力をかけられて、 気持ちよさの感覚が生まれないような方向、違和感の生じる方向に動かすと、 あとで(何日か経ってから)おかしな結果になることがありうると言えます。 何か 無理に動かされた感覚が生じる方法は避けるのが望ましい。 もしも修正したい方向に動かすとしても、「無理に動かされた」 という感覚を生じない方法がよい。 そのためには力をできるだけ(言葉のあやではなくて、本当に)かけないことです。
微圧法の原理私が 「微圧法」 と実習のなかで呼んでいる方法の原理を説明したいと思います。 身体のどこかに強めの力をかけることは、できるかぎり避けたい。強い力をかけないでも身体は変化するはずだ、 というのが、「微圧法」 を始めた動機でした。 整体の実習に北海道・九州といった遠いところから参加される方が多く、恐縮します。 参加者の動きを見て感じるのは次のことです。たとえば、相手の身体を観察するのに、 あちこちを揉んだりさすったり常にしていないと満足できないのかな、と思われる人がいます。 初心者ではこのようなことがありませんが、すでに何かをしている人に、 触りまくりの人が多いのではないかと感じます。それだけでなく、多くの人は 「指圧」 の観念があるのか、 押さえる時にはグッと押さえようとする。 触って皮膚表面の状態を確かめる意図があるのかもしれません。しかし、 こういう動きは無駄であるばかりでなく、期待しない変化を生み出している可能性があります。事実、 ちょっとどこかに触れただけで、身体のどこかが変化することが色々あるからです。 これは言葉の 「あや」 で言っているのではなく、本当のところ身体のどこをどう触ればどうなるか、 ということがすべて分かっているわけではなく、分からないことの方が遥かに多いからです。
握手をする時、非常に敏感な人なら、それだけで身体に何かの動き・ 変化が生まれることに気づくかもしれません。でもたいていは無意識の世界で変化が起きるだけで、 どのような効果を生んでいるのか本当のところは誰にも分からないし、 また詳しく調べてみた人もいないでしょう。ただ、皮膚に起きる電気的な変化を調べている人が、 ひょっとしてそういう変化に気づいて調査しているかもしれません。これについては、 傳田光洋 『第三の脳』(朝日出版社、2007) という興味深い本があることを書いておきましょう。 著者は資生堂の主任研究員で、この人によれば、 皮膚がさまざまな情報発信の器官でもあることが明らかになりつつあるようです。 そっと触れられるのと、ぐっと押さえられるのと、どちらが気持ちいいか。比べて見れば明らかでしょう。 時には 「痛きもちいい」 というのもありますけれど、 指先で背中の硬いところに気を送ってもらう(愉気をしてもらう)として、 そっと触れられる方がずっと気持ちよい。ぐっと押さえられると、 押さえられているという感覚だけが前面に出てしまって、気持ちよいという感覚がありません。 もちろん全然さわらずにじっと見ているだけ、というのは何だか不安になるかもしれませんが、 身体のどこかに刺激を与えたあと、しばらくじっとしていることが必要なことがよくあります。 例えば操体法がそうです。行きにくい方に関節をもってきて、少し抵抗をあたえ、 行きやすい方にすとんと動かす。そうすると、行きやすくなっています。しかし、この後が大切で、 しばらくじっとしている方がよろしい。じっとしている間に筋肉などがじんわりと緩んで、 いい感じになるのですが、すぐに次の動作をしてしまうと、うまく行きません。 (09.04 初出)
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