奈良市西笹鉾町 |
頸と腰
「整体屋」 か 「整体師」 か時には、ちょっとムダ話をしましょう。整体をやっている人のことを今は 「整体師」 と呼びますが、 ひと昔前なら 「整体屋」 が当たり前でした。私は 「整体屋」 という言い方が好きです。 挨拶のときに 「しもじもの皆さん」 と切り出す宰相がどこかにいるという噂ですけれど、 そういう意識でお上から官製の 「整体師」 という呼称を与えてもらいたいとは思いません。「整体師さん」 といわれると、 腰のあたりがもぞもぞして落ち着かないですね。「整体屋さん」 と呼んでもらう方がいい。 名刺に 「百姓」 と書いている人がいました。私はこういう簡潔ないい方が好きですが、普通は 「農業」 と書くのでしょうか。 あるいは、もっとしかつめらしく、○○町農業委員、○○村△△地区自治会理事などと書くのでしょうか。 古い呼称が次第に差別用語のような位置に貶められるので、もっと重みのある呼称に改めたいという考えが分からないことはありませんが、 どこかに権力を笠に着る趣があって、私は好きになれません。なぜ呼び方にまでお上の力を借りなければいけないのか。 腰をしゃんとさせるとムダ話はこれくらいにして、と。たいていの整体屋さんは、頸(くび)と腰とがつながっていると言います。 たとえば整体屋の草わけともいうべき野口晴哉(はるちか、1911〜76)は、 頸の骨の一ばん下にある頸椎7番(記号ではC7と書きます)が歪んでいると、 腰の骨の一ばん下にある腰椎5番(同じくL5)も歪んでいる――そんな意味のことを書いて(『体運動の構造』)います。 だから頸がどうなっているか分かれば腰のようすも分かる、と。(背骨の記号は、頸椎がC、胸椎がT、腰椎はL。)
頸と腰がつながっていることを感じ取るには、どうすればいいでしょうか。何事もまずは実験です。胡坐(あぐら)をかいて坐り、 頸を左へ右へと回してみてください。おかしな感じがまったくなければいいですけれど、もしも少し痛みがあるとか、回しにくいとか、 そんな感じがあれば、どこかにぐあいの悪いところがあることになります。その感じを覚えておいてください。 次に正坐します。腰を後ろに突き出して背中を丸くしたりせず、腰を引いて背筋をすっくと立ててください。そうしてしばらく、 というのはそうですね、30秒ほど坐っています。それから頸をさっきと同じように左へ右へと回してみてください。 どうです。頸の感じが先ほどと違っているのではありませんか。腰がシャンとしていると、頸の感じがよくなってきます。よく、 頸の周りがうっとうしくて、と訴えてくる人がいます。これを読んでいるあなたも、そのひとりかもしれません。そういう人には、 あなたの腰が少し後ろに曲がり始めている可能性があることを知ってもらいたいと思います。そうです。ひとことで言えば、 あなたのからだに老いが忍び寄っているかもしれないんです。 腰を入れて坐るなぜ腰と頸とが、つながっているのでしょうか。腰が少し後ろにせり出すと、背骨の右と左にある筋をどうしても引っ張ってしまいます。 これがずっと上にある頸をも引っ張っている。ですから腰をシャンとすれば、頸もラクになります。
逆に考えれば、頸だけをいじっても腰がしっかりしないことには、頸がよくならないことが分かるでしょう。 このように頸と腰とはつながっています。ですから頸がうっとうしいと訴える人は、頸もさることながら、 腰をシャンとすることを心がければいいですね。椅子に坐る時に、脚を前に投げ出して、ずりおちそうな形で坐るのなどは、 ラクに見えてラクではありません。おのれのからだを老いに向けてどんどん追い込んでいるようなものです。それが例え高校生であっても。 坐るときは腰を入れて坐りましょう。それだけであなたの頸はかなりよくなります。腰をシャンとして坐らなければ、いくら整体を受けても、 よくなりません。ストレート・ネックと呼ばれる頸になっている人が多いですが、これもPCを扱っている時の姿とつながっていることでしょう。 ただし頸と深くつながっているのは腰だけでなく肩や腕もですから、腕の捻れを正すことも忘れてはなりません。 頸と腰のつながりをもう一つ取り上げるなら、頸椎の曲がりと腰椎の曲がりとは同じ向きであることが多い、と言っておきたいと思います。 腰の骨が左へ捻れている人は、頸の骨も左へ捻れていることが多い。これも気をつけたい点です。腰が後ろへせり出してくると、 猫背も進みます。いずれにしても腰が後ろにせり出していいことはありません。 (09.05 初出)
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