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整体の名人たち
よく、○○整体とか、○○療法と銘打って売り出している整体屋さんがあります。 そのことの意味を私は否定しませんけれど、私自身は 《流派》 とか 《学派》 とかには無縁であり続けたい。 どこかに属して石頭になるのは御免です。 技(わざ)としての整体
先日、問い合わせの電話をかけて来た方が、そちらはどんな整体ですか、と尋ねます。 どんなと言われても、ちょっと一口では説明できません、と答えたのですが、その人は不満だったようで、 重ねて、整体といっても野口整体とか色々あるでしょう、何という整体なんですか、と聞かれる。 私は、流派に属していないので簡単には説明のしようがありません、と答えました。 その人はそれで、ああそうですか、と電話を切ってしまわれた。なぜそんなに 《流派》 にこだわるのでしょうか。 どこそこ派に属していると、権威がありそうに見えて安心できるのでしょうか。 整体が人類共通の技(わざ)になる日が来ると、私は期待していますし、 そうならなければ整体の技が大きく発展することはないだろうと思っています。 整体を人類共通の技に育てていくため必要なのは、どんなことでしょう。 そのような 「派」 の発想法を捨てることではないでしょうか。 ○○整体と名乗って、自分の技を囲いこむことが商売のネタになっている現状は、 侘(わ)びしいかぎり。まるで西洋中世の錬金術の時代みたいです。 "朱鯨亭" の教室では実習に来られる方々に全部の技を公開しています。 バランス療法
人類の技はどんなものでも、先人の業績の上に立ったもののはずです。 天才と言われるような人の仕事も、やはり例外ではないでしょう。"朱鯨亭" の整体には、 整体の大家が作り上げた成果を取り入れています。主な施術法として基本に据(す)えている技術は、 孤峰(こほう)のように聳(そび)えるユニークな整体家だった 坂本恒夫 (さかもと・つねお、1921-2003)さんの 「バランス療法」 です。坂本先生は福山の名人として知られた方でしたが、 先年、惜(お)しくも亡くなりました。関節の問題をどのように楽に解決するかを、 突きつめて追求した整体家だといえるでしょう。未整備の部分を残しているものの、 最短の時間で成果を挙げられる点では並ぶものがありませんし、すべての技を公開する姿勢も学ぶに値します。 触手療法心臓外科医から整体に転向した僧医、福増一切照(ふくます・さいしょう、1941-99?)さんの 「触手療法」(しょくしゅりょうほう)の考え方も、私の方法にとって重要な要素をなしています。 この人は京都の相国寺(しょうこくじ)を拠点として活躍後、90年代に長くない生涯を閉じられました。 骨を直接に操作せず、筋肉を解き放つことによって骨は自然に動くという考え方をして成功した人だといえます。 筋肉の重要性を説いた人は少ないだけに、整体技術の中で重要な位置を占めて当然の人だと思います。 この人に注目する人が少ないのは残念です。もっと知られていい人でしょう。 野口整体三番目に 「野生の思想家」 と呼ばれる 野口晴哉 (のぐち・はるちか、1911-76)さんの 「野口整体」。これについては、なかなか一口で説明できません。 あえて言えば、人間が持つ自然の治癒力を引き出す体系ということになるでしょうか。 詳しくは、活元(かつげん)、愉気(ゆき)などの関連項目、 または野口さんの書いた本 『整体入門』(ちくま文庫)をお読みください。 私の方法の中心をなしているわけではありませんが、考え方・とらえ方に影響を受けていると思います。 ただし、一言付け加えれば、野口整体を 「信仰」 しているような感じの人が多いのは不思議。 信じる必要はないんじゃないかと思うのですが、ときどき野口整体が近所にないので、 といって施術を受けに来られる方がある。そういう人はたいてい一度で来なくなります。 私の方法が野口整体とは違うからでしょう。失望するんですね。お気の毒でした。 操体法
もう一人付け加えておきたいのは、だれにでもできる体ほぐしの技 術 「操体法」 をまとめられた仙台の医師、橋本敬三(はしもと・けいぞう、1897-1993) さんです。この人もすでに物故されています。橋本先生が80歳代の頃に、 一度だけご自宅に電話をかけてお話しする機会がありました。誠実な感じのやりとりを今も思い出すこと ができます。筋肉痛や比較的あたらしいゆがみを修正するのに、橋本さんの方法は 欠かせません。ただし、古いゆがみなどをこれで取ろうとすると、たいへん暇がかかることになりますので、 万能というわけには参りません。 なお、橋本敬三さんが参考にしたという 「正体術」 というものがあり、 高橋迪雄(たかはし・みちお、生没年不詳)さんの 『正体術矯正法』(1927年)が 復刻(たにぐち書店)されています。今ではこの方法を身につけている人は数少ないでしょうが、 内容を見ると参考になる点が多く、橋本敬三さんだけでなく、 野口晴哉さんなどもこれから影響を受けていることが伺われます。 自然治癒力いちばん大切なのを忘れていました。それは、今これを読んでいらっしゃる読者の自然治癒力(ちゆりょく)です。 これがもっとも大切なもの。自分の自然治癒力を信頼することができれば、 どんな病も癒(い)えてしまうといっても過言ではないでしょう。 ところがそれを忘れて薬や道具に頼ってしまう人が多いのは残念。 薬に症状を抑える働きはあっても、人の病を癒(いや)す力はありません。病を癒すのは、あなたの自然治癒力です。 一言つけくわえると、この自然治癒力の大きな部分は人の心の中にある。病いを得るのは、 何か心に問題があるからではないだろうか。そこの部分を解決することも大切な課題だと感じます。野口晴哉さんは、 この点でも優れた資質を持った指導者だったようです。 まだまだこの点で野口さんから学ぶことはたくさんあるなあと感じています。
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