奈良市西笹鉾町

歩く極楽、歩かぬ地獄

 

来られた方に、毎日あるいていますか、とお聞きすると、あまり歩いていませんね、と答えが返ってくることが多いです。 でも、それで大丈夫なんだろうか。

ポンプ式の井戸 (福井市)

私の毎日

私は毎朝・毎夕、JR奈良駅から朱鯨亭まで 片道約2.5キロを歩いています。朱鯨亭に来られたお客様から、ここにお住まいですか、 とよく質問を受けるのですけれど、朱鯨亭は店だけ。大和郡山に住んでいますので、歩いて通わねばなりません。 たいていは三条通→小西通→東向北の順に通ります。奈良いちばんの繁華街である東向商店街は、朝は薄暗くて歩く気になりませんので、 避けています。

雨の日にバスに乗ることもありますけれど、行き帰りをたいていは歩いています。ですから最低1日に5キロは歩いているでしょう。 万歩計はつけていませんので、1歩を0.7メートルとして計算すると、1日に7000歩あまりは歩いていることになります。 ついでながら私は車の免許を持っていません。ですから家には車がありませんし、テレビもありません。 子どもたちは3人とも成人していますが、3人とも免許を持っていません。 これは子どもの頃からテクテク歩くのが習いになっていた無意識の影響かもしれませんね。持つな、と言ったことはありませんから。

山道を歩く

さて私は休日に山道などを歩いていることが多いです。例えば昨日は大和郡山の矢田から出発して、 矢田寺→近畿自然歩道→松尾湿原→松尾寺→松尾寺口 というルートで歩きました。坂道が多いので、 平地とはエネルギー消費量が随分違うでしょうけれど、直線で測って5キロほど歩いています。山道はうねっていますし、 途中で道を少し間違えたところがあって、けもの道のようなところをウネウネと通りましたから、 実際の距離としては6キロほど歩いたでしょうか。かつて20年ほど前、ここにハッチョウトンボが生息していると聞いて来た松尾湿原は、 今は蜘蛛の巣だらけで、最近だれも歩いていないらしく、道が消えかけていました。でも20年ばかり前に来たことのある場所は、 やはり懐かしい。

ピンク ノ ウゼンカズラ (大和郡山市)

ついでながら、矢田丘陵のご紹介をしておきましょう。矢田丘陵は、奈良市と大和郡山市の西部に南北に長く続いている丘陵です。 最高点でも340メートルあまりですから、険しい山ではありません。奈良盆地の海抜は70〜80メートルほどですので、 高低差は200メートルあまり。やはり山というより丘というのがふさわしいでしょう。ところがそこを辿っている道は、 ほとんどが樹木に覆われて、昼なお薄暗い道が多い。夏でも比較的すずしいですね。 本格的に山登りするのはしんどい、気楽に山道を歩いてみたい、という人にぴったりではないでしょうか。

気のスポット?

また一昨日は奈良県南部の天川村を歩いてきました。有名な天川の弁財天は期待したほどではありませんでした。 周囲の様子が期待はずれ、神社のたたずまいが期待はずれ、そのうえ社務所にいる神職の表情も期待はずれ(失礼)。 いったん破産したというこの神社が、なぜあれほど持ち上げられるのか、不思議に思いました。でも帰ってから、 ある方法(ちょっと説明が難しい)で調べてみると、この神社の位置に意味があるらしいことがわかります。 別のページ(物質と意識)に書いたことですが、物質とは別に意識のレベルで意味のある位置があって、 重要な神社などは、そういう位置に存在していることが多いらしい。物質としての神社には意味がなくても位置に意味がある、 というケースがあるのでしょう。でも人の尻馬にのって、天川、天川、天川は気のスポットだ、と持ち上げるのは、 私にはどうも感心できません。

同じ天川村でも、大峰山の登山口にあたる洞川(どろがわ)がよかった。森の中は平地では見慣れない山の植物が豊富でしたし、 江戸時代から十数代続いているという古めかしい宿や鍾乳洞も興味深かった。夕方、川の周辺を飛ぶ蛍も素晴らしかった。お勧めです。

ムクゲ (大和郡山市)

歩くということ

話しが歩くことから逸れました。閑話休題。私の一日5キロなど、昔なら児戯みたいなものですね。街道筋を行く人は、 一日に30キロが標準だったと言われているでしょう。昭和の初めまで奈良の東にある柳生に住む人は、 早朝に石畳の道を降りてきて奈良で商売をし、夕方おなじ道を帰るという具合だったそうですから、 これも計算してみると一日30キロほどになります。街道筋を歩く人は一日40キロ進んだという話もあります。 朝7時に出立するとして、夕方6時までで11時間。1時間休憩として、確かに一日40キロは不可能ではありません。

してみると、現代人は歩く距離が圧倒的に少なくなっています。ドアからドアまで車という人が多い。 朱鯨亭に来られる方々も多くが車です。遠方からでも車で来られる人が多い。これが人の身体にどんな変化をもたらしているか、 想像に難くありません。

もちろん、歩くとしても、街なかでは舗装道路を歩くより仕方がない。舗装道路は足底の振動が全身にじかに響くので、 身体によくないんじゃないかと私は思っているんですけれど、ま、そのことは措くとして、ともかく歩く量が少ない。 その結果、股関節を硬くし、ひいては全身を硬くしているように思えます。身体が硬くなるほど、あちこちに不都合が出てきやすい。

歩いている時に、腰や背中に手をあててみてください。骨盤や背骨も歩くにつれて動いていることが実感できるでしょう。 そんなに激しい歩き方をしなくても、ゆっくり楽しみながら歩くだけで、全身が動きます。毎日これを繰り返して全身のコリをほぐす。 そうすれば、整体の世話にならなくて済む身体に変化していくことでしょう。歩くことは快楽です。

 

(08.08 初出)

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