質問ということ
これは困ったなあ、とつぶやくことが時々あります。身体の状態についてご質問をいただいた時です。
詳しく書かれていない
何が困るのかといいますと、たいてい詳しいことが書かれていないから困るのです。例えば、
── 先日、自転車に乗って歩道を走っていて、横道から急に人が出て来たので、 慌ててハンドルを右に切って止まったところ、その時にからだをひねってしまったらしく、 だんだん腰が痛くなって来ました。腰の中心部が痛いのです。整体や鍼に行ってみましたが、 思わしく改善しません。何かいい方法はありませんか。本当は奈良まで行ければいいのですけれど、 何しろ北海道に住んでいますので出かけるわけにも参りません。よろしくお願いいたします。
と、こういうような趣旨のメールを時々いただくことがあります。お気持ちは分かります。 でも状況が詳しく書かれていないから、これだけで判断するのが難しいわけです。 ご本人は痛くなった時の状況を詳しく書いているじゃないか、と思われるでしょう。でも、 同じような状況だから、同じような身体の状態になるとは限りません。その人の普段の生活や癖によって、 その後の変化が決まってきますから、同じような状況で発生した痛みだから、 同じような身体の状況になっているはずだ、というわけには行かないものです。
痛くなった時の状況を詳しくお聞きしても、その人の身体の状況が分かるものではありません。 詳しく書いてほしいのは「腰の中心部が痛い」のなら、中心部というのが、どの辺りなのか、痛いというけれど、 どのように痛いのか、そういう身体の状況を詳しく書いてほしいというのが、こちらの希望です。
身体の状況を詳しく
「腰の中心部が痛い」というなら、ベルトがあたるところのすぐ下と少し上が、時々痛くなる、とか、 中心部といっても、完ぺきに真中ではなく、少し右に寄ったあたり、 腰骨が少し出っ張っているあたりが痛く、ずっと持続して痛む、それから背骨の上の方、 肋骨の少し下のあたりが痛む、これは身体をひねった時にズキッと痛む、 というように具体的に詳しく書いてあれば、ある程度は判断がつくかもしれません。
それから、ただ単に腰が痛いだけなのかどうか。腰が痛いだけでなく、背中のどこかにつっぱり感があるとか、 足首が少しおかしいとか、鎖骨の下を押すと痛いとか、一見すると無関係な情報も大いに役立つことがあります。 もう一つ、風呂に入る時に鏡に全身を映してみて、 どこがどのように歪んでいるかを見るのも参考になることがあります。
私たちが、来られた方の身体をみせていただく時には、このようなことを詳細に観察します。 その上でどこがどうなっているかを判断するわけです。そしてその判断に基づいて、 どこをどう変化させれば、こうなるだろうと予想をたてて操法に取り組むんです。 腰が痛いというだけでは、どうすればいいかを判断することができません。
というわけで、もしもこのような質問をされる時は、ご自分の身体を詳細に観察して、 無関係に見えることも書いてほしい。時には、それだけで対処法をアドバイスできる場合もあるからです。 でも本当のことを言えば、北海道からでも来ていただきたい。じかに身体を見せていただければ、 もっとも的確な判断ができるわけですから。
技術についての質問
もう一つつけ加えたいのは、施術家からのご質問です。こちらは専門的に、 専門用語を駆使して詳しく書いてありますけれど、どこをどのように観察するか、 という点で私のやり方と違っています。ですから、私ならこういう点を観察するのだが、 という点について何も書かれていないので、やはり困るのです。自分のところに連れてきてもらえれば、 何とか対処できるかもしれないといつも思います。
いずれにしても身体の状況に関するメールでのご質問は、する方も、される方も難しいものです。 詳しいことが書かれていないメールに、かりにお答えするとすれば、あくまで一般論を書くか、 とんちんかんな思い込みを書くか、どちらかになるでしょう。 それでは却って質問された方に迷惑なことになってしまいます。ですから、 できれば遠方からでもお越しいただきたい。施術家の方は困っている方とご一緒に来ていただければと思います。
最近、この種のご質問が多数来ておりますので、整理の都合上、ご質問は書面で郵送されたものに限らせていただきます。勝手ながらメールでのご質問にはお答えできません。
最後にお願いです。ときどき無署名の質問をいただくことがあります。若い方がツイッターのような感覚で書いて来られるのでしょうが、受け取るほうは不気味で、質問にお答えするどころではありません。どうぞ、お名前や住所地の概要などを書いた上で、ご質問くださるように。「東京都文京区の鈴木というもので、ネットの仕事をしております」くらいのことは書いてほしいですね。
それからいつくもの項目を並べて質問して来られる場合、このような場合は、私が返事を書くのに時間を要しますし、それだけのノウハウを無料で提供するわけで、「無料相談所」を開設しているわけではありません。返事を書くの要する時間やノウハウへの対価をお支払いいただきたい。「お時間のある時にお答えください」などと言われても、私にはそんなに時間が有り余っているわけじゃありません。質問を多項目に亘ってされる方は対価の準備をされてから、ご質問くださるようにおねがいします。対価といっても評価の仕方が難しいですから、施術に要すると同じように1時間あたり5千円程度を原則とさせてください。内容にも寄りますが、私がこのHPの記事を一つ書くのに最低2時間は要しています。そのあたりからご判断ください。
電話でのご質問・ご相談にはお答えしかねます。
(2010.09 初出、2014.08 改訂)