肘痛 (1)

肘(ひじ)の関節は少々くるっていても痛まないため、放っておかれることが多いですね。ところが肘の故障があると肩や首が大きな影響を受ける。このことが知られていません。

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樫の新緑

「一の腕」と「二の腕」

いつものことながら少し脇道にそれますが、「二の腕」って何でしょうか? 正確に答えられますか。「二の腕」があるのだったら「一の腕」だってあるはず。それはどこのこと? こう正面切ってたずねられると、正確な答えの出せる人は、あまりいないでしょうね。肩からひじまでの部分は、さて「一の腕」、「二の腕」、どちらですか? 実は、この答えが辞書によって違っているから面白い。手近の辞書にどう書いてあるか、暇のある方は図書館へ行って調べてみてください。

ここでは、混乱をさけるために肩からひじまでを「上腕」、肘から手首までを「前腕」と呼んでおきます。 肩 ―― 上腕 ―― 肘 ―― 前腕 ―― 手首 ―― 手 という順序です。

面白いことがあります。上腕には上腕骨(じょうわんこつ)が一本あるだけですが、下腕には橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)の二本の骨があります。その下の手首の部分は三つ小さな骨(裏にくっついている骨を数えると四)でできていて、さらにその先は四つ、そして指は五本。一から五まで順番になっている。まことに造化の神は面白いことを思いついたものです。

ひじとひざは似ている

この関係は脚も同じです。膝(ひざ)より上には大腿骨(だいたいこつ)が一本あるだけですが、膝より下には脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)の二本がある。そのため肘と膝はよく似た構造をもっています。

ただ、膝と肘とで大きな違いがある。立っていると、膝には常に体重がかかるのに対し、大きな力を出すのでなければ肘には体重ほどの負担がかからない点です。比べてみると膝の方が肘より頑丈にできていますね。

肘のほうが膝よりも繊細ですが、基本になる構造には大きな違いがありません。そのため、これが故障するときにも同じような狂い方をします。膝は左右にずれることがありますが、肘も同じように左右にずれることがある。また膝は内外にねじれることが多いですが、肘もねじれていることが多い。

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ヒマラヤスギ(京都植物園)

ズレた肘はどう直すか

肘が左右にズレているとき、どんな状態になるか。肘の内側または外側で、肘のやや下を押えると痛みがあります。この辺りはツボがたくさんあるので、ツボの痛みだと思っている人が多いでしょうが、ズレを直すとほとんど痛みがなくなりますから、ツボの持つ痛みとは違っています。気をつけなければいけない点です。

直すのはいともカンタンです。といっても言葉で書くのが難しい。まあ、試してみましょうか。橈骨が上腕骨に対して外側にズレている場合。直してあげる人が、直してもらう人の前に座ります。直す人は、直される人の肘のやや下、つまり圧痛がある部分に右手の平をあて、反対側の上腕の内側に、つまり肘よりやや上の内側に左手の平を当てます。そうして、少し強めの力でこの二か所をパチンとたたく。そうして圧痛が残っているかどうか確かめる。まだ圧痛があるようだったら、もう一度おなじことを繰り返します。これで痛みがなくなりますから、どうぞお試しください。

逆側のズレがある場合は、この逆の操作をすればよろしい。ただし、こうした言葉による説明だけでは分かりにくいでしょうから、どうするのか教えてほしいという方があれば、直接お越しください。

ねじれの解消法

次にねじれがある場合の解消法です。肘は回転する場所だから、ねじれなどはないはずだ――そうお考えの方もいらっしゃるでしょう。ところが現実には肘がねじれていることが少なくありません。その直し方については「肘が緩むと肩も」の項目に書きましたから、そちらをご参照ください。