肘痛 (2)
肘の簡単操法
肘が痛いという症状は対応が簡単です。肘関節の間にペンとかマジックとかの形状のものを挟んで、手の甲を肩の方に向け、しばらくじっとしていればよい。しばらくというのは1分から2分ほどです。これが肘の簡単操法です。操者は、鼻歌を歌っていてもよろしい。
バドミントンをしている人で、練習後にこれをやっていたら、皆が真似を始めた、と話してくれた人がいました。テニスやバドミントンのようなラケットを使う運動は肘を傷めやすいので、予防のためこのような操作をしておくのは賢明です。マジックやペンがなければ、自分の掌を挟んでじっとしていてもよくなります。
普通の操法で対応できない時
ところが本日のSさんの肘の痛みはこれでは取れません。肘頭の横の凹みを押さえてみると、外側の凹みに圧痛があって、しかもかなり痛いらしく、私が押さえると、顔をしかめるほどです。
肘は膝とは構造が違っていて、半月板にあたるものがありません。ですから肘頭の横の凹みに圧痛が出るのは、肘関節が横方向に変位するからだと考えられます。外側へ向けて変位すると外側に圧痛が出るし、内側へ変位すると、内側に圧痛が出るはずです。
普通はこんな場合にどうするか。反対側から愉気をするとよい。そうすると、関節の位置が正しいところに戻ります。反対側とは、どこか、という質問を出す人がいるかもしれませんので、あらかじめ詳しく説明しておきましょう。外側の凹みに圧痛があれば、内側の凹みから愉気をします。内側の場合は、その反対です。これで解決する。だから、ある意味では簡単です。
ところが本日の人は、こういう操法をしても圧痛が消えません。場合によって激痛の時もあるらしく、右腕は装具を常用しているようです。そんな具合で通常の操法では、どうにもならない。こんな時どうするか。他の操法があるのなら、それを使えばいいけれど、そんな操法は知らない、となると、その場で考えなければならない。私はどうしたか。肘関節に微圧をかけて、そっと動かすことを考えました。
「BRM」
骨の位置を微妙に変化させたいが、強く力をかけると痛いので、そうはできないような場合。その骨に(この場合は尺骨)に微細な力をじっと掛け続ける。これが「微圧」と私が呼んでいる操法です。この操法のオリジナルは「BRM」という方法です。詳しくは、そちらを参照してください。本も出ています。「BRM」のシステムに、このような肘の操法があるかどうかは分かりません。ともかくこれでやってみよう。でも、これが正解でした。痛みは見事に消えました。
後から振り返ってみると、肘関節の位置が「ほんのわずか」変位しただけで激痛が出ていたわけです。ついでにSさんには腰痛があります。この腰痛は腰椎のところに出るタイプらしく、病院ではヘルニアと言われているらしい。特に腰椎5番のところに不具合があるようです。この不具合は、両腕のアンバランスに由来することが多いらしい。腰椎5番がうまく整わない時は、腕、なかんずく肘を見てみることが必要です。
腰椎に肘がかかわっているというだけでなく、肘の影響は思ったよりも広いものです。肩が悪い場合、手首が悪い場合も、肘を詳しく調べて、簡単操法で解決しない時は、上のような操法をする必要があります。簡単操法だけで済ませると、まだ歪みが残ったままになっている可能性があるわけです。
肘痛というと、普通はテニス肘・野球肘というものが問題になります。この場合は凹み部分ではなく、外側上顆・内側上顆という出っ張り部分に痛みが出るので、上に書いて来たこととは直接結びつきませんが、これらの場合にも、肘関節の変位が原因になっていることがあります。ですから、肘関節をよく調べて対応することが求められます。
どのような操法をすればよいか迷った時は、自分の知っている操法の応用版をその場で考えて使ってみる。もちろん、ぐいと力を掛けるようなことをすれば失敗しますから、慎重に取り組むことが必要です。操法家は一つの方法だけにこだわらず、この場合に最適の操法は、どんなものかを常に模索し続けることが求められていると思います。
( 2014. 11 初出 )