母子整体

子どもの身体に歪みがある場合、お母さんの身体にも同じような歪みのあることがあります。「子どもは親の姿を見て育つ」というのは、姿勢にも当てはまるようです。

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アマリリス
(花空間けいはんな

横坐りの害は子どもにも

7歳の女の子Mちゃんがお母さんにつれられて見えました。お母さんのお友だちも。聞くとMちゃんは頭痛が続くんだそうです。7歳ですよ。何かの間違いではありません。側頭部から後頭部にかけて、右が痛いときもあるし、左が痛いときもあるという。頸椎の2番がズレているに違いありません。ある意味では典型的な頭痛です。右になったり左になったりするのは、頸椎が不安定になっているからだろうと想像されます。

こういう場合は、頸からとりかかってもダメでしょう。まずは足からです。というのは、小さな子どもさんの場合、横坐りの習慣で足が左右不均等になっていることが多いから。Mちゃんは予想どおり横坐りでした。そしてお母さんも!

仙骨がゆがむ

まずMちゃんの足を整えて、骨盤を整えて、それから頸。背中もねじれています。詳細を書き始めると、たいへん長くなってしまうので、それは省略しますが、要するに仰臥した(仰向けに寝た)時に左右の足の傾きが対称になっていません。

【余談ですが、「仰向け」と言われて、どちらだろうと迷う人が非常に多い。学校で「仰向け」とか「うつ伏せ」という言葉を使わないからだろうと思います。どれだけ身体が教育の中で軽視されているかが、こういうところにも表れているように感じられます】

そのために骨盤も少しねじれています。ねじれているのがどこでわかるかといいますと、真ん中にある仙骨をみれば分かります。見かけは微かな違いながら、大きな影響を及ぼす次のような違いがあるかもしれませんから、しっかり調べます。細かく言えば他にも歪みがありますが、大まかには、この2点が大きな問題です。

(1)仙骨が左右対称になっているかどうか。どちらかが硬かったり、横に傾いていたりしないか。どちらかに違和感がないか。

(2)どちらかが少し手前に出っ張っていたりしないか。つまり仰臥の姿勢で、左右どちらかの床からの高さに、差がないか。

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シロツメクサ(花空間けいはんな)

背骨もねじれる

こういうねじれのために、背骨もねじれてきます。それが頸椎にも及んでいるというのが、Mちゃんの頭痛の真相だと感じられます。肋骨にも左右差が出てきます。そのために、肩の高さが違っていました。右が上がって、左が下がっている。これも整えなくてはなりません。

肋骨を完全に整えようとすると、大人のばあい体操をすることが必要ですが、小さな子どもさんのばあいは、そこまでしなくても方法があります。まず下がっている側を上にして、横向きに寝させます。下がっている側の肋骨を下から両手の平で軽くおさえて、しばらく(90秒以上)じっと肩の方向へ向けて押さえていれば、ほぼよくなります。だめだったら、同じことを何度か繰り返せばよくなります。Mちゃんのばあい、肩の高さにまだ少し差が残ってはいましたが、およそ背骨はまっすぐになりました。大人でもある程度はこの方法が使えます。

肩がどちらか下がっているという人が多いはずですから、大人でもこの方法を試してみてください。呼吸がしやすくなるかもしれません。

お母さんにも整体

さて、Mちゃんがほぼ終わったところで、こんどはお母さんです。1時間で2人やらないといけないのは少しつらいですが、お母さんをそのままにしておくと、子どもは親の姿をみて育ちますから、また横坐りを始めかねません。お母さんもちゃんと坐るようにしておかなければならない。案の定、お母さんも似たような状態でした。およそ整ったところで、並んでもらうと、Mちゃんはしっかり行儀よく正坐しているのに、お母さんは無意識のうちに横坐りです。

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トケイソウの一種(花空間けいはんな)

やはりこれは、習慣が続いた時間長さの問題であるらしい。お母さんもご自分に呆れながら「あ、また」と言って坐りなおされる。そうそう、それでOKですよ。2人の横坐りが完全になくなるのを祈って、滋賀県まで無事にお帰りになるよう送り出しました。Mちゃんには「お母さんが横坐りしていたら、叱ってあげてね」と言って。

この横坐りの例だけでなく、母子で来られる場合は、お母さんのからだも整えることが必要かもしれません。子どもだけだと、すぐ元の木阿弥でしょう。「子は親の背中を見て育つ」。ところで、お母さんのお友達はどうしたのか、というお尋ねですか。この方はずいぶん何度も通って来られた人ですから、まずは大丈夫でしょう。皆さんのお宅での母子関係はいかがでしょうか。

ついでに言っておきますと、このような関係は他の症状でもあるかもしれません。例えば、子どもさんに喘息がある場合、お母さん(またはお父さん)にも整体を受けてもらう必要があるかもしれません。子どもは無意識のうちに親の姿勢を真似ていますから、親の姿勢を直さないと、子どもの姿勢もよくならないかもしれない。親とは、つらいものですね。

( 2008. 08 初出 )