不眠と叡智印
印を結ぶだけで不眠が直るかもしれません。どんな印なのか、可能性を探ってみましょう。
夜中に目が覚める
―― 頸がおかしい、不眠です。腰も痛い。
といって60代の男性Tさんがいらっしゃいました。定年を迎え、特にお金には困らないので、まあ晴耕雨読の生活です、とおっしゃいます。62歳の誕生日を目前にして今も毎日せっせと汗を流している私などからすれば、まことに羨ましいかぎり。
とはいえTさんの一番の悩みは、よく寝られないことらしい。
―― 床につくのは11時ごろですね。寝つきはいいんですよ。女房がいうのに、いま横になったと思うたらもう寝息をたててると驚くほどです。ところが早い時は2時に目が覚めます。少し寝たかなと思うて時計をみても、3時になってればよう寝たほうです。そうなれば、もう目が冴え冴えとして、それ以上は無理ですワ。寝ようとしても、ただうつらうつらするばっかりで、怪しげな夢を見るか、妄想が膨らんで来るか。まあそんなところです。
―― 寝られなかったら、どうしはるんですか?
―― そやから、4時ごろには起き出して、そろそろ朝刊が来てるから、まあ、それを読んでるようなことです。
眠る力をつける
不眠についてはルドルフ・シュタイナー(1861~1925)が講演の中で発言していまして、一つの言葉を繰り返していれば、眠る力がついて来るというようなことを書いています。そこで私も夜中に目がさえて眠れない時に、マントラを唱えてみると、不思議によく眠れることがあります。
近鉄の奈良駅から朱鯨亭へ向かう東向北(ひがしむききた)商店街の右手に小さな郵便局があり、すぐ隣のお地蔵さんの前に、「地蔵菩薩ご真言」と書いた札がおいてあります。朱鯨亭の看板のように板が黒ずんで遠くからは見えにくいですけれど、近寄ってよく見ると、
―― おんかかかびさんまえいそわか
と書いてあります。この「ご真言」というのは、真言密教で用いられるマントラ(呪文)の一種です。(ほかにも真言と名の付くものは色々あります。ご関心のある方は「真言」または「マントラ」で検索して下さい。)呪文にどういう意味があるのか気になる向きもいらっしゃるでしょう。「かかか」というのは原語のサンスクリットでは「はっはっは」という笑い声なんだそうですが、それはどちらでもよろしい。でも、このまま続けて唱えるのは少しややこしいから、区切りを入れますと、
―― おん かかか びさんまえい そわか
となります。これをもう少しゆっくりと、
―― おーん、かかかー、びさんまえい、そわかー
と繰り返し唱えるわけです。もしも怪しげな妄想が沸いてきたら、また「おーん、かかかー」に戻るようにします。すると、そのうちに不思議にもすっと眠ってしまいます。地蔵菩薩のご利益があるんでしょう。
しかしこれは寝つきの時だけで、睡眠時間を延ばす効果があるかどうかは分かりません。
叡智印とは?
そこでTさんに「ジナーナ・ムドラー」をお薦めしてみました。「ジナーナ・ムドラー」、日本語にすると「叡智印」は、インドの女性ヒーラー、スリー・チャクラバルティさんが、『聖なる旅路』という本の中で紹介しているムドラー(印)です。書いてあるのを読んだだけで、実際に試していませんでしたので、こういうのがあるけれど、試してみますかと提案したのでした。『聖なる旅路』から引用しましょう(289ページ)。
―― ジナーナ・ムドラー(思考力、記憶力、不眠症)
ジナーナ・ムドラーは叡智のポーズと呼ばれています。ジナーナとはサンスクリット語で知識を意味します。仏像で一番よく見られるポーズでもあります。
―― このムドラーは大脳の血行を良くします。そのため、思考力や記憶力を高めるわけです。また不眠症に対しても効果があります。私自身、このムドラーにより不眠症を治しました。また、このムドラーは調和、平和、至福を生み出し、意識を超越した神秘的世界についての理解をもたらします。
この叡智印(ジナーナ・ムドラー)のやり方は次の通りです。親指の指先の腹を人差指の指先の腹と合わせます。残り3本の指は、伸ばしておく。それだけです。これを両手で45分間行ないます。散歩をしながらでも、テレビを見ながらでもいい。45分が無理な時は、30分を2回でも結構です。
叡智印を組んで冥想をすることもできます。達人坐(HPの「簡単冥想」の項目に説明があります)で坐り、両手に叡智印を組んで膝のうえに載せていればいいと思います。
Tさんは家に帰られてから、さっそくこれを続けられたらしい。4日ほどして、メールが来まして、散歩のときに毎日やっていたら、よく眠れるようになりました、ありがとうございました、と書いてありました。でも、そんなに早く効果の出るものなんでしょうか。Tさんのご報告を疑うわけではありませんが、信じられない気持ちがします。
このような方法は、すぐその場で効果が確認できるものではありませんので、多数のかたが報告してくださることが必須です。確かめて見ずに効果があると宣伝するわけには参りません。ぜひ不眠に悩んでいらっしゃる皆さんに試してもらって、報告をいただくことが必要です。多くのご報告がいただけるものと期待しています。 → ムドラー(印)
( 2009. 06 初出 )