耳の詰まり感

耳に詰まり感を訴える人がいます。こういうのは、たいてい耳のところにある側頭骨(そくとうこつ)の問題です。どうなっているのか、どうすればいいのか、立ち止まって考えてみましょう。

nazuna
ナズナ

腰を整える

耳の詰まり感のある人が来ました。といっても、鼻をかんだあと耳が詰まるとか、高いところから一気に降りたら耳の詰まり感があるとか、そういう普通にある詰まり感とは違います。何だか耳の中に薄い膜が張ったような感じがして気持ちが悪い。常に耳が詰まっているようで、音がこもって聞こえる。そういう訴えでした。

こういうのは、たいていが側頭骨の問題です。側頭骨は、耳の上から耳の後ろの出っ張りまで、ぐるっと耳を取り囲んでいる骨です。ですから、耳の孔は側頭骨の孔でもあるわけです。また、顎はこの側頭骨にぶら下がっている格好になっています。

この人は、耳の異常だけではなく、腰が痛い、肩が凝っている、とも訴えていました。背中の緊張が高くて、硬くなっている。言い換えると、背中が下から引っ張られてカチカチになっている。そのため、後頭骨や側頭骨が下に引っ張られているわけです。

腰が痛いというのですから、まず骨盤を直しておかなければならない。見ると、骨盤の歪みが激しいわけではありません。では仰臥してもらいましょう。やや前に腰骨が行っている側の脚を少し持ち上げて5秒ほど保ち、ドスンと落とします。その後しばらくそのまま寝ていてもらいました。正確に測ったわけではないのですが、5分間ほどじっとしていてもらったでしょう。こういうドスンと落とす操法をしますと、しばらくは骨格全体が動いていますから、数分は寝ていた方が効果的です。

── では、起き上がってください。はい、どうですか、腰は。色々曲げたり、捻ったりして、どこが痛いか教えてください。

色々動かして見て、

── うーん、どこも痛くありません。大丈夫ですね。

hakobe
ハコベ

背中の緊張を解く

ではその次。背中の反りが失われ、腰が硬くなっていますから、何とかすることが必要です。そこで高橋迪雄さんの「古典正體術」に倣って、次のような方法を試してみることにしました。腰の反りをつける操法です。

仰臥する。そして膝を曲げて両脚をゆっくり引き上げます。両脚が腰の上に直立している状態まで持って来て、そこで仰臥のまま、すこし腰を反らせてもらいます。ですから背中の下に操者の手を挿し込みと、やや床から浮いている状態ですね。この位置で5秒ほど保って両脚を尻の下へドスンと落とし、そろりそろりと脚を伸ばして行く。本人の数呼吸を挟んで、この動作を3回繰り返してもらいます。これで、腰の弾力がつき、すこり反りがついたはずです。

背中の張りが少しはましになったことでしょう。ここで側頭骨に取り掛かります。耳が詰まっているのは左なので、左手の小指を使います。小指の第3関節と第2関節のあいだの外側面を手前から指先方向にさっと撫でる。これだけです。30秒ほどおいて。

── 耳のつまり感はどうなりました?

耳のあたりに手を当てて、しばらく沈黙。

── あれっ。いまは音がしていませんね。詰まった感じがなくなってる。

── そうですか。うまく行きましたか。

一般的に言って耳に関係のある状況は、まず背中の緊張を解いて、次に側頭骨・後頭骨を上げることです。

( 2012. 02 初出 )