鼻が歪んだ
鼻筋が突然ゆがんでしまったとすれば、どうしますか。仕方がないと諦めがつきますか。
鼻が曲がった
2か月に一度メンテナンスに来られるSさん。いつもは、さしてひどい状態でいらっしゃることはありませんが、入って来られたお顔をみると、常と違って鼻筋が曲っているではありませんか。端正なお顔立ちが台無しになっています。何が起きたのかとお尋ねしてみると、上から大きな板が落ちて、鼻の横に当たったのだそうです。しばらく変色していたが、今は痛みがないとおっしゃいます。さて、どうしたものでしょうか。
あくまで一般論ですが、顔は全身の投影だといえます。つまり顔面が歪んでいれば、全身の歪みが投影されていると考えられます。また逆に、顔面が歪むと全身に波及して、からだのあちこちが歪んでくることもあります。そのような例をこれまでに何人も見てきました。全身を整えると顔面も自然に整ってくることが多い。
ですから、Sさんの場合も顔面には直接に手を触れないで、身体、特に背骨をまっすぐにすれば鼻筋も通るのではないかと考えました。うまく行けばいいが・・。
瞬間の歪みが保存
坐ってもらって後ろから見ると確かに背骨が弯曲しています。Sさんの背中をたびたび拝見していますが、これほど曲っていたことはありません。板が当った打撲の影響で鼻が曲がり、さらにその影響が体幹部にも出て骨盤が歪み、背骨も歪んでしまったに相違ありません。顔面の歪みが全身に波及した典型例だといえます。でも、なぜ全身に波及するのか、その原因をもう少しよく見ると、別の問題もあるように思います。
この時に起きたことを、もっと詳しく言ってみましょう。鼻の右への打撃があってその直後、Sさんは身体を左後ろに本能的に引いたでしょう。そういう動作をしてみれば分かりますが、背中が歪みます。そしてこのような強い打撲があると、その瞬間の歪みが保存されるわけです。だから打撲は怖い。逆に人工的に打ち込みを行なって歪みを直す方法もあります。それほど打撲は影響が大きいですから、どこかを打った時は、後に影響が残らないかどうか慎重に観察する必要があります。
さて、Sさんの全身の歪みはどうなったか。骨盤の歪みを正し、背骨の弯曲を正し、付随して足の形を整えるうち、坐っていただくと、背骨がほぼまっすぐになりました。続いて、顔と頭の骨をチェックして、これも歪みを少なくしていくと、鼻筋が通ってきました。ご本人にも鏡をお渡しして確認してもらいました。「うれしい」と一言。
顔と体の連動
顔と全身とが、どのように対応しているかについて、いくつかの説明があるようです。私としては、鼻は背骨、口は骨盤に当たるのだろうと言えます。下顎は両脚に当ると思います。背骨を正すと鼻筋が整うという現象は、何度も経験していることです。つい先日も同じような例がありました。ただ、人によって背骨を正しても鼻筋が通らないケースもあるので、どの条件がどう違うのか分からない点もあります。
それにしても、打撲で曲がった鼻筋が、背骨の改善でまっすぐになるという現象を見ると、改めてからだの不思議を感じてしまいます。最近ずっと続けて整体の研修に来ていらっしゃるTさんから、お客さまの顔が整って喜ばれましたというお便りをいただきました。私もうれしい。
( 2012. 12 初出 )