座るとお尻が痛い
座るとお尻が痛い、と訴えてこられる方が時々います。病院に行っても、こういう症状は相手にされない。痛み止めが出されるくらいでしょう。たいていは骨盤のゆがみによるものですから、放っておいてはいけません。
座ると尾テイ骨が痛いのはなぜ?
イスやベンチにしばらく座っていると尾テイ骨が痛くなるといって、滋賀県から訪ねて来られた女性がいました。Sさんとしておきます。
「びていこつ」という字を書いてみなさいと言われて、すっとその場で書ける人はあまりいないでしょう。テイはめったに使わない難しい字です。なのに尾テイ骨という言葉はよく使われますね。そして意味が誤解されているのではないでしょうか。尾テイ骨は正確にいうと、尾骨のことです。つまり背骨をずっと下までたどって行った時に、お尻の先の方にある「しっぽ」のところの骨です。
Sさんは尾テイ骨が痛いとおっしゃるので、尾骨を押してみました。でも取り立てて痛いようすではありませんでした。尾骨の調整をしてみましたけれど、そんなによくなった様子ではありません。
これは尾骨ではないなと感じた私は、腰の前にある腸骨(ちょうこつ)をさわって見ました。ベルトが前で止まっている骨です。すると、そこが関西語でやや「こそばい」(関東語で「くすぐったい」)感じだとおっしゃいます。そして、もう一方の側の腸骨は異常がないと言われる。こんなふうに一方の腸骨だけがくすぐったいのは、骨盤がねじれている時などに生じる反応です。
骨盤がねじれている
腸骨の前がくすぐったいとか痛いとかいうのは、骨盤がねじれていて、そちら側の腸骨がわずかながら前に回転しているためです。腸骨はお尻の坐骨(ざこつ)とつながって一つのものであることは、骨盤の解剖図を見れば、どなたもお分かりでしょう。どちらかの腸骨が前に回転すると、その腸骨の前が痛くなったり、くすぐったく感じたりします。そうすると、腸骨につながっている坐骨は、ややお尻の方に突き出すかっこうになりますね。それがイスやベンチの座面にあたってしばらくすると、痛くなってきます。
つまり尾骨ではなく、坐骨が痛いというのが正しい。しかし「坐骨」という言葉はあまり知られていません。「坐骨神経痛」という、あまりあてにならない言葉がよく知られているわりには、「坐骨」がどこにあるかは知られていないように思います。座っている時に、お尻の真下に手を差し込んでみてください。そこに骨があるでしょう。それが坐骨です。これが痛い。尾骨は真ん中に一箇所あるだけですが、坐骨は左右に一つずつあります。Sさんは尾骨が痛かったのではなく、右側の坐骨が痛かったんです。そこで、このゆがみを修正してみると、予想通り痛みがなくなりました。
骨盤のゆがみを直すと
からだ直しは、簡単なことならぜひとも皆さんに家庭で実行してもらいたいと、いつも思っています。誰でも歪みを修正できるように、どうするのか簡単なやり方をご説明したいところですけれど、その加減が難しい。さらさらと文章に書いて、こんなふうにしてみてください、というのが難しいですね。どの程度の力なのか、どの方向に押すのか、それを文章で正確に書くのは困難です。じっさいに手をこうあてて、こう動かしてというのを見ていただかないと、なかなかうまく伝えられません。
だったらビデオを載せたらいい? なるほど、そうですね。いずれビデオをここに載せることも考えましょう。でも、ビデオでも難しいことがありますよ。それは触覚です。つまり手の感覚。こればかりは写真やビデオでは表現しようがない。整体をする側からすれば、あらゆる感覚の内でいちばん重要なのが触覚です。これがすべてだといっていいほど、手の感覚に頼っています。
そんなわけで、当分は来ていただくより仕方がないでしょう。骨盤のねじれが原因であれば、一度で痛みが消えます。写真の姉妹のように、どこへでも屈託なく出かけられるようになりますよ。
( 2006. 07 初出、2007. 11 改訂 )