寝床体操の効果
このところ、寝床体操で腰痛が治ったという人が続いています。先日の女性は、朱鯨亭のHPで寝床体操の項目を読み、実際にやってみた。そうしたら、仕事中のある瞬間に、腰の痛みがまったく消えていることに気づいて驚いた、と話して下さいました。
腰痛が起きない
私自身はどうかといいますと、過去にひどい腰痛を起こしたことがありましたが、少なくともここ十年ほど、腰痛を起こしたことがありません。それは、おかしくなると「寝床体操」をしているからだろうと思っています。以前は毎日やっていましたが、このところ大きな問題がないせいで、少々サボっています。でも少し腰の調子がおかしいなと思うときは必ずやっています。
これも先日のこと、整体実習の時に、一人の男性にうつ伏せになってもらいました。骨盤の横から手を下に差し入れてみると、床から骨盤までの高さが左右で明確に分かるほど(1センチほど)違っていました。骨盤がねじれているわけです。しかもねじれの程度が大きい。そこで、寝床体操の1番(詳しくはこちら)をその場でやってもらいました。すると直前まで違っていた骨盤の高さがほぼ揃っています。これほど劇的に効くとは、実は私も思っていませんでした。
橋本敬三さんの工夫
この1番の体操は、操体法の基礎としてよく知られているもので、操体法を工夫された橋本敬三さんの発案になるもの(それより古い正體術の影響があるかもしれません)でしょう。操体法の本で紹介されている体操は、どれを見ても非常に簡単で、しかも誰にでもできます。こんなもので本当によくなるのか。もう数十年前、初めて橋本先生の本でみた時は正直いって疑問に思いました。でも試してみると確かに調子がいいんです。それで寝床体操の一つとして取り入れているわけです。ちなみに体操など、からだの技術については特許を取れません。人類の共有財産です。
誰にでもできて、しかも効果の高いことが体操の理想でしょう。プロでなければできない技術では、普通の人が取り入れることが不可能ですから、橋本先生の考えは素晴らしい。先生の考え方の基本は、からだを動かしてみるのに、楽な方向とそうでない(つまり違和感や痛みのある)方向とがある場合、楽な方向へ動かすと、ゆがみが直るというものです。普通は痛い方向を何とかしようと、そちらへ恐る恐る動かすようなことをやり勝ちですが、そうではないところに橋本先生の真骨頂があります。あくまで違和感のない方向へ動かします。
楽な方向へ
つまり、からだは楽な方へ動かすと楽になる、という原則があるわけです。この原則は重要です。整体をする時も、これを忘れてはなりません。もちろん例外もあります。特に古い歪みはこの原則ではなくならない場合がありますから、必ずしもいつも原則がなりたつわけではありませんが、多くの場合に原則がなりたちます。つまり何か非常に疲れる「健康法」とか、たいへんお金のかかる方法などは、どこかが間違っているのではないかと疑ってかかるのがいいと思います。
整体と取り組んでいる方々も、この操体法の原則を忘れずにやってほしいと願っています。今は痛い方法を採用していても、痛くない方法があればそちらを採用する、という原則を立てておきたいと思います。
整体の理想というものがあるとすれば、「自分で自分のからだの面倒をみる」ことでしょう。誰かにやってもらうのは、まだ理想にほど遠い。
( 2008. 10 初出 )