「スロー整体」

整体を受けに来られた人から、このホームページについて厳しい感想やら、 うれしい感想やらをいただきます。「字ばっかりですね」 と、ちくりと批判されることがあるかと思えば、 「読んでるだけで緩みますね」 と褒めていただくこともあります。 「字ばっかり」 なのは確かですが、「朱鯨亭寄席」 に来ていると思ってもらったらどうでしょう。 おしゃべりを聴いているノリで読んでもらえたら、高座に上がっている者としては嬉しい。

「やる気のない整体」

先日(2005年9月4日)、私の整体についてこんな感想をもらいました。

―― こちらの料金だったら100回行けるほど、あっちこっちの整体を受けましたけど、 こんなにやる気のない整体は初めてです。

と、息子と同い歳の青年に言われてしまいました。何? 「やる気のない整体」 ですと?

yagyu
奈良春日山越え
柳生街道の寝仏

もちろん本気で言ったのでないことは、彼の調子からすぐ分かります。 「やる気がないように見える整体」 といいたいところを、ずばり 「やる気のない整体」 と言ったんですね。 うーん、この青年、なかなかやりおる。私の整体はそれほどスローなのか・・・。

彼の言い分を聞いてみましょう。Wさんと名乗る彼は 「○○流呼吸法」 を熱心にやりすぎたためか、 大変めずらしい症状をかかえていますが、今そのことは措いておきます。彼がいうのは、 「どこの整体へ行っても、どすん、ばたん、ごきごきっ、と激しいことをされる。大変な気迫だ。けれど、 今日のは何だかぜんぜん気合が入っていない、物足りない」 ということです。 確かに時間の半分以上は、だらーっと座って、じーっとしているだけだから、 不安になってくる人がいてもおかしくない。こんなのでホンマに効くんかいな、と。 では逆にお尋ねしましょう。どすん、ばたん、ごきっ、とやらなければ本当に効果は出ないのですか。

変化する私の方法

私の整体の方法は以前と比べて大きく変わって来ています。 一つの方法に効果がないと見極めると、常に新しい方法を開拓するように心がけているからです。

同業者じゃないか、と思う人が時々知らん顔をして来ることがありますが、 でも残念ながら偵察の目的で来ても、あんまり役に立たないでしょうね。そばで私の施術を見ていても、 時によってやり方の違うことがありますし、 相手により場合により色々な方法を繰り出すのが私のやり方ですから、 一つのメソッドで進めるシステムにはなっていません。 ですから私の方法を 「○○整体」 と名づけることはできませんが、あえて名づけるとしたら、 まあ、「スロー整体」 でしょうか。

どんどん静かになる

rakan
北条の五百羅漢

昔は、どたん、ばたんをずいぶんしていた時期もあります。でも、工夫を続けるうちに次第に 静かになって来ました。どたん、ばたん、ごきっ、とすることは、ほとんど必要のないことが分かってきました。 これから先、もっと静かになってしまうかもしれません。

例えば、背中の骨を正すのに 「○○式」 というのがあって、私も施術を受けてみたことがあります。 これなどは背中に触れずに気合だけで背骨の歪みを直してしまうというものです。 確かにこの施術を受けると、自分の背中が変化していることを感じました。 でも今は疑問を持っています。背骨だけを正してもあまり意味がないからです。

Wさんも 「○○式」 を受けたんだそうです。それだけではありません。彼がいうように、 朱鯨亭の料金で100回行けるほど、あちこちの整体を受けたそうです。 ところが今も背骨はガタガタのままだ。ひざや腰のゆがみを修正していないからでしょう。 人によっては、背骨の修正だけで効果のでる人もいるかもしれませんが、腰から下がゆがんでいると、 いくら背骨だけを直しても、その場かぎりになるのは当然です。背骨がガタガタだと私が言うのを聞いて、 Wさんは 「残念」 とか 「虚しい」 とか、そんな意味のことをつぶやいていました。

「スロー整体」

というわけで、私の整体は今のところ 「スロー整体」 とでも呼ぶのが適当かな、と思います。

ここで、ちょっと手に力を入れてみてください。どんな力でもかまいません。 かならずどこかが硬くなるでしょう。これが何度も続いたり、長い時間つづいたりすると、 からだにため込んだ緊張が、やがてどこかにシコリになります。病いの原因は、多くがこれでしょうね。 からだの一部に出来ているシコリが病いを引き起こす。ですから、これを解き放ってやればよろしい。 ならば、どずん、ばたん、とすることは何もないはずですね。むしろ、だらー、 じーっとやるほうが似合っていることがお分かりになるでしょう。これが 「スロー整体」 です。

(2006. 12 初出)