整体って何? (1) ~整体Q&A~
整体は、からだの歪みや痛みを取り除いて、未病を防ぐ優れた技術
からだの動きがおかしい、痛くなったりシビレたりする――すると、 自分のからだが歪(ゆが)んでるなあ、凝(こ)っているなあと感じるかもしれません。 歪みや凝りをとり除いて、釣合いをとり戻す作業が整体です。
Q なぜ痛くなったり痺(しび)れたりするんでしょう?
A バランスが崩れるからです。
身体はいつも動いています。筋肉も骨もそうです。夜は静かに寝ているつもりでも寝返りをうちますし、 頭蓋骨にじっと手を当てると、息に合わせて少し動いているのが分かるでしょう。 コンクリートの建物のようにがっちりと固まっているわけではないのに、 なぜ人の身体はまっすぐ立っていられるのでしょう。
釣合いをとる仕組みが身体に備わっているからです。お尻から腰にかけて、 つまり骨盤。それから肩と頸(くび)が釣合いをとっています。 胴の両はしが釣合いをとっているわけですね。脚も釣合いをとる上で重要な部分です。
Q 釣り合いが崩れるとなぜ痛みがでるのですか?
A あちこちが硬くなり血行が悪くなるからです。
全身に釣り合いをとる仕組みがいつも働いていますが、からだの前後差・左右差が発生してつり合いが崩れると、周辺の筋肉や、筋膜・骨膜・腱(けん)など、タンパク質の一種「コラーゲン」を多く含む組織が圧迫されます。ここに疲労物質やカルシウムなどが溜まると硬くなり、毛細血管が圧迫されて、血行が悪くなります。この現象は特に手指・足趾などの末梢部分で強く起きます。趾が硬くなっていると、膝に痛みが出るとか、手指が硬くなってくると、肩・頸・顎などをひっぱって痛みや引き攣(つ)れが起きてきます。
そうすると、血行の悪さのために、あちこちに疲労物質やカルシウムが蓄積するという悪循環が起きてきます。血流が阻害されている末梢部分だけでなく、それより身体の中心に近いところでも同じ現象が起きてきますから、ますます悪循環がおこって、いたるところに痛みやしびれが出るようになるかもしれません。 これは、つり合いを早くもとに戻しなさい――そう体が声を出してくれていると考えてもいいのでしょうね。
Q では肩こりなども歪みの結果ですか?
A その通りです。
ひどく肩がこっている人を観察して分かるのは、骨盤が歪んでいること、 それから肘がズレて肩の関節が硬くなっていること、肋骨に左右差が出ていること、 後頭骨が歪んでいること、足首が悪いこと、などです。足首を直し、骨盤を正しい位置に戻してやり、 腕や肋骨・後頭骨を正してやると、自然に肩こりが消えて行きます。 骨盤の真中にある仙骨の位置がほんの少し変化するだけで、背中の張りが消えて行くことが珍しくありません。 また、膝が痛い人の膝関節を正し、骨盤を正してやると、膝の痛みがわずかの時間で消えてしまいます。
Q 整体って、どんな風にするの?
A 骨格・筋肉などの釣り合いを回復させます。
釣合いのうまく取れていない身体では、あちこちが痛くなったり、痺(しび)れたり、 という不調を生じています。こんな時は骨格や筋肉、筋膜などをいい状態に戻す必要があります。
そのために、骨格を自由度の高い位置に戻す、筋肉の凝りを取り除く、 組織を変化させる、といった作業が必要です。 これを整体の <操法> と呼びます。整体というと、力任せに骨をごりっと動かすのだ、 と思われている人も少なくないと思います。でも、それは事実ではありません。 それぞれの関節や筋肉によって特有の性質がありますから、これに従って必要な操作を加えると、 自然に関節がもとに戻ったり、筋肉が緩んだり、組織が変化したりするのが整体です。
Q 実際にはどんな風にするのですか?
A 共鳴などの原理を使います。
足ツボとか耳ツボと呼ばれる方法があります。足の裏が全身の縮図になっているわけですね。 これと同じように手も全身の縮図になっています。例えば手の甲の手首の少し上のあたりは、 骨盤にあたりますから、そのあたりを少し撫でて、しばらくじっと寝ていると、骨盤が整ってきます。
手の甲の共鳴区をじっと触っているだけという瞬間があると、整体ってこんな簡単なことなのか。 こんなのでなぜ身体が変わるのかと、不思議に思う人が少なくありません。整体を受けに来た青年が 「いったい何をしてるんですか?」 と尋ねたこともありました。
Q 本当に手で撫でるだけで、 身体が変化するのですか?
A 硬直している部分では特別な操法が必要です。
非常に硬くなっている部分では、撫でるだけでは解決しない場合もあります。 ですから、すべてが手の甲を撫でるだけということではありません。まずは、全体を緩めておいて、 共鳴の原理を使うと変化しやすいようです。歪みのある部分に手を添えることもありますが、 基本的には強い力を使いません。
Q 自分でもできますか?
A もちろん。
例えば、こんな風にしてみましょう。背骨を下から順に一個ずつ左右から押してみます。 どこかに痛みを感じるところはありませんか。もし痛い骨があれば、 そのすぐ脇を指でゆっくり押さえてみます。<押さえる> というと、ぐっと力を入れるのか と思われるかもしれないので、<当てる> とか <触れる> と言った方が正確かもしれません。 3分間ほどじっと指を当てている。
どうでしょうか。痛みが消えているのではありませんか。歪みがきつかったり、 古いゆがみだったりすると痛みがうまく取れないこともありますが、 痛みが消えてしまう場合の方が多いでしょう。なぜなのか。色々と説明されていますが、 要するに 「からだに軽く手を当てると緩む」。これが一番カンタンな整体の原理です。
Q どんな風に変わるのですか?
A 意外なところが変わるかもしれません。
「初めてやっていただいた後、どこが一番変わったかと考えてみたんです。歩いている時に、 これまでは自分の体重が足の外側、小指の側にかかっていたのに、 力が中心に集まるようになったことに気づいたんです」。これはお客様のご意見ですが、 意図した結果ではありません。私はそういう効果をねらっていませんでした。 でも、釣合いが変わることで、O脚傾向の人が締まった動き方ができるようになったわけですね。 意図しないでもバランスが変わる。これが整体のおもしろいところです。
Q 整体で、つらい症状が楽になりますか?
症状を取り除くことが目的ではありません。
辛い症状があるのは、からだが歪んで警戒信号を出しているからです。ですから、 症状のもとになっている歪みを取り除くのが整体です。もとになっている歪みがなくなれば、 自然に症状が消えて行きます。ですから「腰痛の直し方」、「肩こりの直し方」、 などというものはなく、その状態を生んでいる原因を取り除くという考え方です。ですから、 注射や貼り薬で症状を抑えるような発想とはまったく異なります。
その結果、急性のものなら多くの痛みは1~数回の整体施術で改善します。瞬間に痛みがとれてしまって、 「あれっ」 とおっしゃる人も珍しくありません。しかし痛みを起こすのは、 バランスがどこかでおかしくなっているわけですから、それを元にもどすには、 やはりある程度の日数を必要とすることもあります。慢性症状がある場合には、 筋肉がとても硬くなっていることがまれではありません。ですから、 その人によって、よくなっていく道筋はさまざまです。手のしびれや指の痛みなども、 全体のバランスが回復すれば簡単に消える場合が珍しくありません。 数年のあいだ動かなかった指が一瞬で動くようになるケースさえあります。
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