骨盤と上体 ~ 左右の釣り合い (1)
身体は左右の釣り合いをどうして成り立たせているか。興味深いテーマです。しばらく続けて追求してみたいと思います。
からだが傾いていると
からだが無闇に左に傾いている人が来ました。70歳代の女性でした。これだけ傾いていれば、どこかしら大きな問題が隠れているに違いない。ご本人もそのことが気がかりで、腰が痛いといった症状があることよりも、どこに問題があるのかを心配しているようでした。
たまに道を歩いている人で、どちらかに傾いたまま歩いている人を見ることがあります。身体が左に傾くとどうなるか。普通に考えても、そんな格好で長距離を歩くことはできそうにありません。体重が一方のみにかかるわけですから、右にかかる体重はどうなるのか。どこかで釣り合いを取らなければ、歩けるわけがありません。どこがどうなっているのか。
ちなみに、これは後で知ったことですが、この方の靴は右側が激しく片減りしていました。左に傾いているのであれば、体重が左にかかって、左側の靴が減りそうなものですが、そうはなっていなかった。
骨盤と上体とが逆に
結論を先に言ってしまうと、骨盤が右に傾いていて、釣り合いをとるために上半身が左に傾いているのでした。なるほど、これなら左に傾いているのも不思議ではありませんね。一言でいえば、身体の全体がうねっているということになります。
そう言えば確かに簡単です。でも左に大きく傾いているなら、骨盤の傾きも半端ではないはずだ。そう思って骨盤を確かめてみようとして驚きました。ありえないくらいに骨盤が傾いているんです。大雑把に言って30度ほどは傾いているでしょう。これは大変だ。
これを修正して真っ直ぐにするのは不可能ではありません。しかし70代のご老体にそんなことをすると、あとで反動が来ます。その時はよくても後で痛みが出てしまう。骨盤そのものは真っ直ぐになっても、周囲の筋肉などの組織がいうことを聞きません。あちこちが不自然に突っ張ってくるにちがいない。こういう場合は少しずつやるしか手がありません。
横すわりが原因
でも、なぜこんな格好になってしまったのか。それが問題です。答えは横に坐っていたからです。左側に両脚を出して、右側にお尻がくる坐り方を常に続けていたから、体重が右側にかかって上半身が左に傾くことになっていたと想像されます。ご本人に確認してみると、確かにその通りだったようです。
横坐りをする女性は、初めはそうでなくても、次第に一方だけに坐るようになって行きます。この方の場合は、左に両脚を出して、右に体重をあずける坐り方を続けていたわけです。その反対はしたくてもできません。それほど骨盤が歪んでしまったまま固定していることになります。
同じ姿勢を常に繰り返すとどうなるか。その見事な見本というべきでしょう。横坐りをどうしてもしなくてはならないなら、時どきに反対方向へするのがよいと思います。いつも同じ方向へ坐っていると、やがてこういう恐ろしいことになりますから。男性で横坐りをする人もなくはないけれど、脚が太い人に限られます。畳の上に坐る時についつい横に坐ってしまう女性は、注意しなければいけません。
( 2013. 10 初出 )