距骨の均衡 ~ 左右の釣り合い (4)

足首にある距骨という骨が全身の釣り合に重要な役割を果たしています。

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カクチョウラン

距骨という骨

今日は足首の話です。もしも足首に左右差があれば、全身に左右差が生まれるのは当然でしょう。足首がおかしい人が多い。ここはぜひとも直しておくことが必要な個所です。ここに距骨という骨があります。

距骨(きょこつ)といっても骨の名前を勉強した人でないと、馴染みのない名前かもしれません。足の一番下にあるのが踵骨(しょうこつ)で、これはかかと(踵)の骨です。その上に乗っているのが距骨で、その上には脛骨が来ます。つまりすね(脛)の骨。ですから、かかと(踵)と、すね(脛)の間の骨が距骨です。(ちなみに距の字は 〈 けづめ 〉 の意味だそうです)

この骨の両側には外果、内果という2つの出っ張りがあります。普通には「外踝」、「内踝」と書きますが、解剖学の方面では「内果」、「外果」と書きます。もちろん、どちらでも構いません。「内くるぶし」、「外くるぶし」でOKです。二つの出っ張りの間にあるのが距骨だという言い方もできます。あなたの外果・内果は外と内とが、だいたい同じ大きさ(ふくらみ方)になっているでしょうか。もしも外側の方が大きい、ということであれば距骨の位置に異常があります。あるいは大きさは同じくらいであっても、外側の方がずっと下にあるなら、それも異常な位置です。

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フラグミペディア

釣り合いを成立させる

なぜ位置がおかしくなるのかといえば、もともとあなたの生活態度に左右差があるからでしょう。「なぜ」という質問には答えるのが難しい。逐一その人の生活を見ているのなら別ですけれど、そんなことはありえないわけで、生活態度に何か左右差があるから偏ってくるのでしょう、としか言えません。例えば横坐りを続けていると、距骨は偏ってきます。あるいはカバンを常にどちらか一方の肩にかけているから偏ってくるのかもしれません。そういう偏りがあるはずです。普段から何か気をつけることはありますか、と帰りがけに尋ねる人がいらっしゃいますが、一般原則は、できるだけ左右どちらかに偏らないように、という一言になります。

距骨の位置を直すのは簡単で、外果・内果の下に親指と人差指を当てているだけです。足首が大きい人なら親指と中指でも結構です。距骨の位置に何か異常があれば、内果の下に圧痛のあることが多い。内果が少し内側へズレて来ているんです。そんな場合は外果・内果の両方の下に指を当てて、じっとしてみてください。数分で出っ張りの大きさが変わり、圧痛が消えてきます。

誰かにしてあげるなら、仰臥の(上向きに寝た)状態になってもらって両足を同時にやってあげてください。圧痛が片方であってもかまいません。圧痛のある方もない方も同時にやってあげると両方とも整ってきます。このあたりが身体の不思議なところで、やる人が色々と計らいをするより、身体に変化を任せていればいい。下手に手加減をすると失敗してしまうんです。自然に任せると自然に距骨の均衡がとれる

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オンシジウム

すべてはつながっている

この操法を私自身が講座の時にやってもらいました。人数が奇数だったのでそうしたわけです。長めにやってもらいました。10分ほどもやってもらったかもしれません。すると驚いたことに、私の内果が左右とも外果より大きくなった。こんなことは初めてです。内果の方が大きい人は珍しい。どうしてこんなことになったのか。やり過ぎて異常になったとは考えにくい。むしろこれが正常な位置と考えた方がいいのではないか。そう考えました。

歩いてみて、特におかしい感じはありませんでした。でも翌日になって歩く感じが変ってきました。ぐっと重心が内側に寄って、安定感が出てきました。やってもらう前には、内果の下に圧痛がありましたから、内果の下に圧痛がある人は、足の重心が外に寄って靴が外減りしている人です。私もご多分に漏れず、そんな歩き方をしていたようです。しかし今は重心が内に寄っています。

どんな歩き方がいいのか、という質問をよく受けるので、しゃちこばってもだめでしょう。正しい歩き方とかいって頑張ってみても短時間しか保たないですから、母趾(おやゆび)に力を入れて歩けばどうでしょうか──そんな風に答えていました。自分でも母趾に力をこめて歩いていました。今は母趾に力を入れる必要を感じません。これは不思議な感覚です。母趾に無理に力を入れなくても自然に重心が内側にあり、安定して歩いている感じです。

時々だれかに距骨の修正をしてもらえば、それだけで安定した歩き方が可能なのではないか。そんな具合に感じています。これだけで、左右の釣り合いが大幅に改善するのではないでしょうか。今のところ私の内果は外果よりもずっと大きく感じます。興味のある人は朱鯨亭に来て触ってみてください。

( 2013. 10 初出 )