均衡と捻れ ~ 左右の釣り合い (6)

からだの均衡は、からだの捻じれと密接に関わっています。それについて考えます。

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カクチョウラン

膝を調整するには

肩に鞄(かばん)を掛けると、そちら側の肩が上がることは知る人が少ないようです。試せばすぐに分かることですが、なぜそちらが上がるのか。

左右の釣り合いをとるため、という説明が解りやすいですね。例えば左肩に鞄を掛けたとします。すると左肩が上にあがる。肩だけでなく、全身の状態として考えると、左肩が上がるのは全体として右側へ傾いている状態を示しています。左に荷重がかかって、右に傾いているわけですから、釣り合いをとっているのは確かでしょう。重い荷物を手に持った時など、特にそうです。

でも、どうもそれだけではないらしい。釣り合いをとるのは結果であって、直接には腕の筋肉の緊張を感じて上がるようになっているのではないかと思われます。なぜそう思うのでしょうか。

肩に何も掛けていない時でも、一方の肩の上がっている人がいるので、釣り合いだけが原因で肩の上下が起きるのではないと解ります。よく、誰それの右肩が下がっているなどという言い方をしますが、左側の肩が上がっているから、右肩が下がっていると感じるだけです。どちらの肩に問題があるかといえば肩は上がっている方に問題がある

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フラグミペディア

膝痛と坐骨神経痛

腕のどこかに緊張があると同側の肩が上がる。これが明確な法則です。どこに緊張があるかは分かりません。肘のあたりかもしれないし、手の指にある緊張が原因かもしれません。ともかく腕(と手)のどこかに緊張があると、同側の肩が上がる。

そうすると腕のどこに緊張があるかを探しだして、それを解決できれば肩が下がる理屈です。私は、もう何度も何度も同じことを繰り返してきました。そうやって腕の緊張を取り除き、肩の高さを揃える作業をやってきました。例外があるとすれば、緊張を見落としている時だけでしょう。緊張を取ると必ずそちら側の肩が下がって、左右が揃います。

骨盤の傾きや足の左右差とは別に、腕に左右差を生む原因が隠れていることが解ります。肩の高さが違っていると上体が微妙に傾いてきますから、胸椎(きょうつい、肩甲骨のあいだ)にも微妙な弯曲が生じています。実際、肩の高さが違う人の胸椎に手を触れてみると、左右のどちらかに圧痛があったり、微妙に曲がっている様子が手に取るように感じられて来ます。

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オンシジウム

腰椎が変わると

ところで、面白い現象があります。背骨が自転車のチェーンに似ていることです。何が似ているかと言えば、一つ一つが剛体で、それらが組み合わさって曲がったり捻れたりしていることです。

自転車のチェーンが外れて困ったことはありませんか。自転車のチェーンを取り外し、曲げたり捻(ねじ)ったりして下さい。そんなことをするのは難しい? 確かに今では、自転車の修理を自分でする人は少数かもしれませんね。ではイメージしてみてください。修理をしたことがないからそれも難しい? じゃあ近所の自転車屋さんに頼んで、ちょっとチェーンを貸してもらったらどうでしょうか。

自転車のチェーンは捻れていない構造で回転しているので、まっすぐに回転しています。ところが、チェーン構造をしているものに少しでも捻れが入ると、たちまちうまく回らないようになるはずです。チェーンが外れた状態はちょうどこの状態です。背骨も同じことで、尾骨(びこつ、しっぽの跡)がわずかに左右に捻れると、それだけで仙骨がおかしくなったり目眩(めまい)が起きたりと奇妙な現象の起きることがあり、尾骨の捻れが頸椎(けいつい、首の骨)に及ぶことさえあります。

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シレネ

肘のズレの影響

ここで問題にしたいのは、捻れは釣り合いと関係しているのではないか、ということです。両脚の釣り合いが崩れるとします。すると両脚、特に股関節にかかる体重が違ってくるだけでなく、骨盤に脚の骨が組み合わさっている角度が微妙に違ってくる。両方の膝にかかる体重も違いますから左右の膝の角度が微妙に違ってくる。そういう状態です。当然ながら、骨盤がわずかに捻れたり傾いたりする。

するとどうなるでしょうか。背骨の一番下の骨、つまり腰椎5番にかかる力が左右で違ってきます。ということは、背骨の下の端が捻れてくるわけです。腰椎5番にかかる力が左右で同じであれば、捻れません。わずかに違うと、それだけで背骨全体がわずかに捻れてきます。腰椎5番という骨が重要なのは、そういうことでしょう。

あるいは、こういうことを考えてもいい。脚ではなくて、両腕の釣り合いが崩れてしまうとどうなるか。肩をひっぱる力に左右差が出てきた状態です。肩の高さが違ってきます。肩の高さが違ってくるのは、多くは腕の左右差が原因です。

肩の高さが違ってくると、背骨のチェーン構造が崩れてきて、まっすぐではなくなります。どちらかに傾いてきますね。背骨のチェーンが前後に傾く分には、チェーン構造がまっすぐに働いて、うまく回転していることになりますが、少し左右に傾くのは、チェーン構造が捻れるからです。

こんな実験をしてみれば、背骨が捻れると回転がうまく行かなくなることが解ります。まっすぐに立って、身体をそのまま右に捻って行く。どれだけの角度を捻ることが出来たかを覚えておく。次に身体をやや右に傾けて、右に捻って行く。ずいぶんと回転しにくくなっていることが解るはずです。左で実験しても同じような結果になります。(この実験に別の意味が隠れているようですが、そのことは今は措きます)何れにしても背骨の傾きがあると、回転がやりにくくなります。

脚からでも腕からでも、身体の左右の釣り合いは捻れと関係していると結論づけましょう。

( 2013. 10 初出 )