正坐ができた (2)

腰痛をよくしようと取り組むうちに、正坐ができるようになった方がありました。どうなっていたのでしょうか。

stairs
興福寺52段の階段

靱帯を傷めた

少し前に右ひざ内側の側副靱帯(そくふくじんたい)を傷めたといわれます(こういうこけおどしの難しい言葉は使いたくない。ひざ内側の靱帯でいいじゃないか)。この部分を傷めると太もも裏側の筋肉が張った感じになって、正坐がうまくできなくなることが確かにあります。

この人も同じような状況だろうと思います。痛みを止めることがまず必要なので、そちらを主にして進めました。わりあいカンタンに痛みは消えましたが、ご本人は不満のようす。何が不満なのかと思って聞いてみますと、いつもは坐っているうちにだんだん痛くなってくる。こんなふうに痛みがとれたからといって、坐っていても痛みが出ないのかどうか自信が持てない、というのです。

股関節をゆるめる

こういっちゃ悪いが、お客様の求められるものは、正直いってこちらにとってまことに厳しいことが多い。時として無理難題を出してこられる。Aさんの言われることも分からなくはないけれど、その後どうなるかまでは予言できません。それは生活してみなければわからない。人それぞれに生活の仕方が違いますし、からだのくせも色々ですから。

それでも私はお客様の無理難題をできるだけ聞くことにしています。無理難題と思われる課題に挑戦してみると、意外な成果が出てくることがあるからです。私は、Aさんの疑問に答えて股関節をゆるめてみることにしました。股関節がかなり硬くなっていたからです。そして股関節をゆるめると、仙骨をゆるめることにもなって、腰痛の予防にもなると考えました。

sarusawa
猿沢の池

正坐ができるようになる

実際に腰椎4番をゆるめ、両方の股関節をゆるめてみて、かなり緩んだ感触だったので、坐ってみてください、とお願いしました。正坐はしんどいことが分かっていたので、あぐらでもなんでも、ともかく坐ってもらえればいいと思ってそういったのですけれど、Aさんは正坐をしています。そうして不思議そうに、ちゃんと正坐できますね、という。痛くないですか、と尋ねてみましたが、ぜんぜん痛くないです、という答えです。どうなったのでしょうか。

まず腰椎4番をゆるめて股関節(の周辺)がゆるむことによって、そこから下に膝(ひざ)まで引っ張っていた筋肉がゆるんだのでしょう。そうしてみると、靱帯の損傷は痛みとは無関係だったことになります。

こんな風にして、お客様の厳しい求めにこたえようとしたために、腰椎4番と股関節をゆるめると膝(ひざ)がゆるむ場合のあることが改めて確認できました。やはり、股関節-膝-足首、この三つはつながっています。どれか一つだけを解決するのではなく、それとつながっているところを変えることで、別のところの矛盾が解決する場合のあることが分かります。足首を解決するのに、膝をさわればいいという場合もあります。

つながりを探る

してみると、整体(ゆがみのない状態)を探しあてるのが整体の仕事であることがお分かりでしょう。このあいだ来られた人は、カイロプラクティックに行って、背骨を一個ずつ皆いじられたとおっしゃっていましたが、こんなのはマグレあたりのやり方です。ともかく全部の骨をゴキゴキしておけばどれか当たるだろう、などというやり方をしていると、とんでもない歪み(ゆがみ)が生じないともかぎりません。この歪みはどことつながっているか、それをつねに探りながら進むのが整体です。

頭が悪いのはどこを操作すればいいのか、と真顔でお聞きになる方がありましたが、それは難しい。ご自分でお考えになってください。