子どもの歪み

5歳のお嬢ちゃんがお母さんに連れられて来ました。こんな小さな子どもも整体を受けるのか、と驚かれるかもしれません。でも、小さなお子さんをみる機会は時々あります。ここでは、どんな整体の操法をしたかということよりも、小さな子どもさんでも、からだの歪みが小さいとは限らない、ということを書いておきます。

okame
ひょっとこ・おかめ

からだの中心軸

もしもお宅に小さなお子さん(あまり小さいと分かりにくいかもしれません。小学生くらいが見やすいかな)がいらっしゃったら、仰向け(上向き)に寝かせてみてください。そうして枕元か足元に坐って、全体を眺めてみてください。からだの中心がまっすぐに通っていますか。全体として左右が対称になっていますか。からだの中心がぐにゃぐにゃしていたり、なんだか左右が対称でない感じを受けることはありませんか。あるいは、両足の開きが左右で大きく違っているとか、そんな状況はありませんか。

今度はうつ伏せ(下向き)にして同じことをしてみてください。からだの中心線が左右どちらかに曲がっているとか、腰のあたりからカーブが出来ているとか、そんな状態になってはいませんか。

小さなお子さんが整体を受けに来られるとすれば、何かまずい状態があるとお母さんが気づかれたからです。私はまずこの作業をします。すると全体が大きく曲がっていたり、足の開きが大きく違っていたりすることが多い。

私の印象では、こんな子どもさんの坐り方に何か問題があるように感じます。横坐りをしていたり、べた坐りをしていたり、といった状況があります。短い時間ならこのような坐り方でも大きな問題は発生しませんが、いつも横坐りということになっていれば、だんだんに問題が膨らんできます。つまり骨盤が歪んでくることになります。

先日の子どもさんの場合、ご本人に聞いてみましたら、そんな坐りかたはしないという。でも正坐をしてもらったら、両足を重ねて坐るようです。保育園では、この坐りかたをしているのだという。ひょっとすると、これに問題があるかもしれません。実際に両足を重ねて正坐して、後ろから眺めてみると分かりますが、骨盤が傾いているのがはっきりするはずです。いつもこれを続けると、やがて骨盤が傾いてくる可能性が高い。

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大仏池

正坐法の影響?

明治から大正の時代にかけて流行した健康法に「岡田式正坐法」というものがありました。岡田虎二郎さん(1872~1920)が提唱したもので、一時は隆盛をきわめ、数多くの有名人も参加していたそうです。ところが大正9年(1920年)にまだ50歳になる前に急死してしまい、支持者が急減したと言われます。今ではもう継承している人が少なくなっているらしい。その理由は岡田さんの書いたものを読めば分かる気がします。

それは正坐するときに両足を重ねて坐るように指示しているからです。岡田さん自身がいつも両足を重ねて坐り続けていたとすれば、彼の骨盤は大きく傾いていた可能性があるでしょう。骨盤が傾いていれば、背骨にも色々不都合が生じて不思議ではありません。当然、内臓にも異常が発生してきます。

この岡田さんの影響は、いまも武道の世界などに続いているのではないか。小学生で武道を習っている子どもさんがたくさんいますけれど、どうやら正坐する時に両足を重ねて坐るように教えられている例が少なくないように感じられます。親指を重ねるだけならいいのではないか、という意見がありますけれど、親指を重ねるだけでも骨盤が傾くことは、ちょっと実験してみれば分かります。

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珈琲を飲むお地蔵さま

歪まない坐りかたを

少し時代は下りますが、大正から昭和にかけて「正體術」を提唱した高橋迪雄さん(生没年不詳)の本を読むと、両足を重ねて正坐するのも歪みの一つと考えていたことが分かります。私も経験的にそう思います。

別段、この坐りかただけを批判しようというつもりはありませんが、横坐りなどを続けると、だんだん骨盤が大きく歪んでくるようになるのは間違いありません。正坐も坐りかたが左右対称になるように気をつけたい。

たびたび書いていることですけれど、脚を組んで坐るのも同じ理由で怖い。子宮筋腫などを生じる原因になると感じられるからです。電車の中で、両脚をからみあわせるようにして坐っている若い女性を時々みかけます。あれなどは、声を掛けて、そんな坐りかたは止めた方がいいですよ、と言ってあげたい気持ちになります。ぜひ避けていただきたいですね。考えてみれば、こういう坐りかたを続ける人の骨盤はすでに歪んでいることでしょう。歪んでいるために、歪んだ坐り方をしたほうが楽だから、同じ坐りかたを続けることになってしまうんだと感じられます。

以上の理由で、小さなお子さんが不調を抱えていたら、からだの歪みがないかどうか、おかしな坐りかたをしていないかどうかを確かめてみられたらいかがでしょう。歪んでいるのではないかと感じたら、ぜひ坐りかたに気をつけてあげてほしいと思います。なお、上記のお母さんは、保育園に働きかけて坐りかたを改善してもらったそうです。

( 2008. 12 初出 )