急性疲労の蓄積
身体の歪みは「慢性疲労の蓄積」によって生じると言われます。でも、時には急性疲労が蓄積することもあるでしょう。それが歪みを生じることはないのでしょうか。
疲労の蓄積
例えばゴルフのプレイをするとします。ボールを打つ前に腕を右に捻りますから、上体も右に捻れます。この動作をゴルフをするたびに繰り返していると、次第に上体が右へ捻れて行きます。なぜ捻れるかと言えば、捻った時に筋肉に発生した疲労がわずかずつ溜まり、だんだん抜けなくなって行くからですね。
こうして左が前、右が後という姿勢が固定して行くことになります。左前・右後の姿勢が固定している人はテニス・ゴルフ・卓球などをやっている人に多い。年単位の長い期間に亘って同じ姿勢が続くことで、筋膜などの結合組織や筋肉に「慢性疲労」が溜まって行きます。こういうのは分かりやすい。
── この歪み方は、ひょっとしてゴルフですか。
── 当たりです。もうゴルフを10年以上やってますから。分かりますか。
というようなやり取りをすることになります。
急性疲労
ところが「急性疲労」が蓄積することがあるようです。急性疲労なら蓄積というのは言葉遣いがおかしいのではないか、と思われるかもしれませんが、急性疲労も確かに蓄積します。
月に一度メンテナンスとして来られているKさん。先日こられた時に背中を拝見すると、えらく歪んでいます。これほど歪んでいるのを見るのは初めてではないだろうか。ばかなことに、またしても私は叫んでしまった。
── わあ、これはひどい。
── そんなこと、他の人に言わないでくださいよ、とお連れさん。
そりゃそうです。確かにこんなことを言われたのでは、誰だって大変なことが起きているのかと心配になってしまいますからね。でも私は悪気があって言ったわけではないから、どうぞ許してください。右肩が前に出て、背骨もひどく歪んで(弯曲して)いるので、思わず叫んでしまいました。
── 何か右が前に行くようなことをしましたか。
── 栗の皮むきをしたんです。
なるほど。栗の皮をむくのは大変ですからね。そのお蔭で、すっかり肩こりがひどくなってしまったに違いありません。「肩こり」と言いますが、肩の筋肉に疲労が蓄積しているのも「こり」感の原因ですが、それよりも背骨が歪んでいることが肩の「こり」感を引き起こしていると言った方が正確です。つまり、凝っているのは肩ばかりではないんです。背骨の周辺もあちこちが凝ってしまって、背骨が曲がるようになってしまった。
急性疲労の蓄積
背骨が曲がる状態になっている人は、骨盤にも問題があります。とすれば、凝っているのは肩と背骨周辺ばかりではない。骨盤にも問題が起きています。骨盤が傾くとか、捻れるとかすると、背骨が載っている土台がおかしくなるわけですから、背骨も歪まないでは済みません。大体は骨盤が左に傾くと腰椎が左に捻れて来る。右に傾くと右に捻れる。背骨だけいじっても戻ってしまいやすいのは、このような理由からです。
栗の皮むきを1時間もしただけで、こんなひどいことになるという明らかな実例です。「急性疲労」が蓄積した顕著な例で、まことにお気の毒でした。
( 2012. 12 初出 )