小胸筋の大切さ
胸の横にある「小胸筋」という筋肉には大切な働きがあり、これが硬くなると困ります。
小胸筋の位置
今回は胸にある「小胸筋」という筋肉に注目してみましょう。一般人には分からない筋肉の名前をいきなり上げて話題にするのは、私の書き方に反するのですが、今回は止むをえません。この筋肉は「肘を掛ける」の項目で取り上げた「前肩点」(=肩関節の前のでっぱり部分、解剖用語で言えば上腕骨頭の前部)とも関係があるからです。まずこの筋肉はどこにあるのか。これから始めましょう。ウィキペディアの記事を引用します。記事の意味が分かりにくければ、この部分を読み飛ばしてくださって結構です。
──胸部の筋肉のうち、胸郭外側面にある胸腕筋のうちの一つ。肋骨前面(第3~第5前面)を起始とし、上外方に集まりながら、肩甲骨の烏口突起に停止する。肩甲骨の外側を下方に引くと同時に、肋骨(第3~第5)を引き上げる作用がある。
まことに難しい言い回しがしてありますが、要するに肋骨の3番~5番の前から始まり、肩甲骨の烏口突起(うこうとっき)に終わる筋肉が「小胸筋」だということです。では「烏口突起」とは何でしょうか。
鎖骨を外にたどっていくと「前肩点」に触れます。この点のすぐ内側、鎖骨の下に出っ張っている突起があるでしょう。それが「烏口突起」です。腕を前後に動かしてみると、肩甲骨の動きにつれて、この突起も動くことが分かるでしょう。
肋骨の数え方ですが、鎖骨のすぐ下、胸骨に近いところにほんの少しだけ顔をのぞかせているのが肋骨の1番、それから下へ順に数えて行けば、番号がわかります。その3番~5番から始まって、この突起のところで終わっている筋肉が小胸筋です。皮膚に近いところにあるのは大胸筋という筋肉で、小胸筋は肋骨の表面についているといえます。
乳がんの原因にも?
以上で「小胸筋」の位置が、およそ分かっていただけたと思います。この筋肉がなぜ「前肩点」について考える際に重要なのかといえば、肩甲骨の烏口突起を下にひっぱる作用をしているからです。
試しに前腕をからだの前に持って来て、肩を前に動かしてみてください。この時、反対側の手で鎖骨の下に触れてみると、小胸筋が盛り上がっているのが分かるでしょう。ですから、この筋肉が硬くなって肩甲骨をひっぱり続ければ、肩の状態が悪くなって、前に巻き込んでくることになります。「猫背」の原因の一つは小胸筋の硬縮であるといえば、だれしも納得できるでしょう。
もう一つ重要なのは、乳ガンの好発部位がこの筋肉のあたりだということです。統計によれば、乳頭を中心に乳房を4分割すると、外側上方に発生するものが約半数です。単なる私の思い込みかもしれませんけれど、この小胸筋が硬化しているあたりで血行が悪くなって、ガンになりやすいのではないでしょうか。
小胸筋を緩める
小胸筋のある場所を手との対応関係で考えてみます。中指は頭部にあたりますし、薬指は腕に対応しますから、小胸筋のある位置は、掌の中指と薬指の間の骨と骨の間、やや凹んだあたりです。ほぼ感情線のあたりから指の付け根まで撫でると、これが小胸筋に対応することが分かります。
実際、このやや凹んだあたりを線状に撫でると、小胸筋のあたりが暖かくなってきます。この筋肉のあたりの血液循環がよくなったことが分かります。私の考えでは、乳ガンの予防、猫背の予防、姿勢の改善などの意味があると思います。(図は左手だけですが、もちろん右手も同じところを撫でないと、肩のバランスが崩れます)。試しに小胸筋のあたりを少し強めに押さえて感覚を確かめておき、そのあとこの操作をして、感覚を比べてみると分かりやすいでしょう。1回だけで改善がみられない場合は、何度か撫でてみてください。
どうしても違和感がとれない人は、そちら側の足の第3指の付け根あたりに圧痛を感じるところがあるはずですから、そのあたりを指先方向に何度か撫でると改善するかもしれません。漠然とですが、手と足の対応していることが感じられます。
( 2011. 08 初出 )