肋骨を正す

突然に胸が痛くなってきたという経験はないでしょうか。肋骨を初め胴体部分は全身のバランスを取っている場所であるらしい。どうなっているのか考えてみましょう。

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うだつ

肋骨が歪む

肋骨の故障といえば普通には、肋骨が折れた、ひびが入ったという話が多いと思います。でも肋骨の変化はそれだけではありません。肋骨が下がるとか、肋骨が歪(ゆが)むとかの現象がしばしば起きている。肋骨は竹ひごで作った籠のようなものですから、背骨が歪めば当然ながら歪んできます。でもこの事実が、あまり知られていません。例えば ──。

先日のこと。いつものように私は操法をしていました。突如として右の胸が痛くなってきました。もちろん私の胸が、です。胸が痛いというより、もう少し正確に言えば、何だか肋骨が歪んで、全身が絞られているような感じ、と言えばいいでしょうか。右の胸からへその辺りにかけて抉(えぐ)られる感じです。これはまずい。放っておくと、どうなることか分からない。しかし操法の最中ですから、突然に胸が痛いと言って操法を中止すればお客様に不安を与えます。どうするか・・・?

操法をしながら、操法している掌の薬指の付け根の線、薬指の付け根に長い骨がありますね。それを手首のあたりから指の付け根に向かって、さっと撫でました。痛みが出ている方だけでなく、左右両手です。

すると、痛みが次第に収まってきて、1~2分のうちに元どおり何ともなくなりました。私はその間も涼しい顔で操法を続けていたわけです。これは何が起きたのかと言えば共鳴現象です。

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長屋門

調整の仕方

詳しく方法を書いておきましょう。まず、あなたの手の甲を見てください。薬指の手前には、甲の部分にも骨がありますね。薬指だけでなく、ほかの指の付け根の手前にもそれぞれ長い骨があります。この骨を中手骨(ちゅうしゅこつ)といいます。

始める前に、まずあなたの胸をよく観察しておきます。肋骨の下を左右両側で比べてみて、高さが違っているということはありませんか。どこか少し窪んでいたりして特徴的な点を選び、その高さを左右で比べてみます。すると、左右で高さの違う人がけっこういます。

今度は、掌側を見てください。手首のところから薬指の中手骨の上を、手首から薬指の付け根までさっと撫でてみてください。もちろん左右両手ともです。親指と人差し指で掌と甲とを挟んで撫でてもいいです。そうして、しばらく時間をおきます。30秒~1分もおけばいいでしょう。それから、もう一度、左右の肋骨の高さを比べてみる。どうですか。揃っているでしょう。もし、まだ揃っていなければ再び同じことをすればよろしい。これで肋骨の歪みが取れます。

ただし、何度も撫でると、鎖骨の周辺が痛くなって苦しむ人がいます。撫でるのは必ず二度までにしてください。

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五輪塔

靴が悪かった

よく背骨が捻れているとか、脊柱が弯曲していると言われますが、けっして背骨だけが歪んでいるわけではありません。背骨の歪みに伴って、その左右にくっついている肋骨が歪むのは当然です。ですから、背骨が気になる人は、いま書いておいた操法を時々やっておけば、背骨の調整にもなるはずです。ただし、下がっている方だけでなく、左右両方ともすることです。そうすれば、ちょうど適当な位置に調整されるはずです。もっともこれだけでは不十分なのも確か。骨盤がおかしければ、背骨をいくら正してみても、また歪みますから。

なぜ私の肋骨が突然ゆがみ始めたのか。靴のせいではないかと思います。この時、私は、いつも履いているウォーキング用の靴ではなく、半年ばかり履いていなかった靴を取り出して履いていました。古い靴を履くとどうなるか、という実験のつもりもありました。これがよくなかった。歩いていても何だかおかしい感じがして、これはまずいな、と思っていました。半年のあいだに足の骨の位置が変わっていたに違いありません。歩きにくい。ということは、足だけでなく上の方も歪んで来たに違いない。その結果が肋骨の歪みを起こしてしまった。靴は、全身に影響を与えていることが分かります。履き慣れない靴がおかしければ、捨ててしまった方がいいかもしれません。

どうやら肋骨は、からだの歪みを吸収するバランサーの役目をしているのではないかと思います。ですから胸が痛いとか、肋骨がどこかおかしいという感じを持っていらっしゃる方は、上のようにして時々肋骨を整えてやるのがいいですね。

( 2010. 11 初出、2014. 05 改訂 )