筋膜伸ばし

筋肉をソーセージの中身とすれば、薄皮にあたる部分が「筋膜」です。これが連続して硬くなっているなら、どうすればよいか。

redshoes
赤い靴はいて (横浜)

「伸展法」の応用

からだの中で特に硬くなりやすい部分があります。例えば上腕の後ろ側にある上腕三頭筋。肘のすぐ上の裏側の部分が硬くなっていることが多い。多いというより、ほとんどの人がここを硬くしています。なぜなのか興味深い点です。腕の後ろ側の筋肉ですから、腕を伸ばす時に縮むはずです。腕は伸ばしていることが多いので、いつも縮んでいるのでしょう。

肩の近くでは三角筋の前が同じように硬くなっています。三角筋は、肩の一番上の部分、肩峰と呼ばれるあたりについている筋肉です。こういう場所を緩めるのに何かいい方法がないものか。指を使って揉みほぐすという方法はありますが、そんなことをすると後でさらに硬くなってしまい、始末が悪くなります。そこで「伸展法」が使えないかと考えました。

「伸展法」というのは河野賢二さんという方が著書『伸展法』(文芸社)で紹介されている筋膜緩めの方法です。ただ、そのままだと必ずしも使いやすくありません。誰でも楽に使えるかといえば、本の説明だけでは少し難しい点があると思います。また『伸展法』の本はすでに絶版で、中古で7千円ほどの値がついていますから、手に入りやすい本とはいえません。誰か一人でも買うと、もう品切れになるでしょう。

kanteibyo
関帝廟 (横浜中華街)

筋膜伸ばし

そこで、簡単に誰でもできるよう工夫して、使える方法にならないかと考えてみました。河野さんが開発された「伸展法」の朱鯨亭版を作ってみようというわけです。「伸」の字を借りてそのものずばり「筋膜伸ばし」と呼んでおくことにします。河野さんはどうおっしゃるか分かりませんが、威厳のある言い方が好きな人は「筋膜伸長法」等と呼んでもいいでしょう。

やってみると非常に効果的なことが分かりました。昨日2週ぶりに来られたOさんは、前回やってもらったあと膝がとても軽快になったと、喜んでくださっていました。また前回の記事で肩の高さが変わるという事実をとってみても、その効果は明らかです。

そのやり方です。上腕三頭筋、つまり肘のすぐ上の裏側にある筋肉を例にとって書いてみます。そこを強めに押してみてください。左右どちらかがかなり痛いという人も多いはずです。何でこんなところが痛いの、と首をひねる人がいるかもしれません。

kanteibyo
関帝廟 (横浜中華街)

押えて関節を動かす

ここで縮こまっている筋膜を伸ばしたい。例えばあなたの左肘の裏が痛いと仮定しましょう。腕を伸ばしたまま肘鉄のとんがりのすぐ上(裏側)を右手でしっかり押えます。しっかりと言っても力任せに押える必要はありません。押えるのに親指を使うか四指を使うかという違いがありますが、どちらでも使いやすいやり方をすればいいと思います。そのまま肘を手前に曲げて行ってください。手先が肩につくぐらいまで十分に曲げると、人によってはアイタタということになるかもしれません。かなり痛ければ、あなたの上腕三頭筋の筋膜が、硬くなっている証拠です。そこで肘を曲げたまま10秒ほど維持します。このように押えて関節を曲げる方法は、某療法にもあるみたいですが、その場合は10秒も押えません。10秒のあいだ押えるのが伸展法の特徴で、これが効果を発揮すると思います。

すると、この場所の縮んでいた筋膜が伸びてくる。そこで肘をもとの伸びた状態に戻します。さて、肘の少し上を押えていた右手をほんの少し2センチほど上にずらします。そうしてまた同じ操作をする。これを上腕部の真ん中あたりまで少しずつ続けます。済んでから確かめると、ここの部分がかなり柔らかくなっているはずです。まだ十分でないと感じたら、もう一度ぜんぶやってもかまいません。

上腕以外の部分でも同じようにできます。ただ、屈筋側を伸ばす場合は関節の曲げ方が反対になりますので、注意してください。例えば、上腕二頭筋にこの方法を適用するなら、まず肘を曲げておいて、ぐっと押え、次第に肘を伸ばして行くという方法になります。場所によって工夫を必要とする場合もありますから、皆さんそれぞれに工夫されることを期待します。

ただし注意が必要なのは腰の後ろで、腰椎のあたりにこの方法を使うと、仙腸関節が開いて腰痛を起こす可能性があります。ご注意ください。

( 2012. 05 初出 )