骨盤体操の危険性
「骨盤体操」とか「骨盤ダイエット」とか、そういう類の体操がはやりのようです。危険性はないのでしょうか。
骨盤の締まりすぎ
股関節が痛くて歩くのに困っている、という女性がいらっしゃいました。Aさんとしておきます。誰かが来られると、まずは仰向け(あおむけ)で寝てくださいと、たいていお願いします。ところが「仰向け」という言葉は、ほとんど死語になっているらしく、しばし考えてから、ええっと、こうですね、と独り言をいいつつ仰向けになる方が多い。「うつ伏せ」も同じように死語ですね。
それはさておき、この状態で骨盤をみると、何となくですが締まりすぎではないか、と思われます。腰骨の両端の距離が普通より短い感じなんです。以後の私とAさんのやりとり。
―― どうも骨盤が締まりすぎみたいに思いますが、骨盤体操か何か、そういうものを何かしたはりましたか?
―― はい、していました。
―― やっぱりですか。いつごろ?
―― 去年の9月ごろですかね。しばらくやっていました。
―― 痛くなったのは、いつごろでしたか。
―― 10月くらいから痛くなってきたんです。
―― 原因はそれですねえ。骨盤体操をやりすぎて、締まりすぎになる人が、ときどきいるんですよ。
―― そうですか。骨盤体操はいけないんですか。
―― いけないわけではないと思いますが、やりすぎるとねえ。「過ぎたるは及ばざるがごとし」です。
―― ああ、そうですか。
私自身は骨盤体操などというものに関心がなくて、どうするのかも知りません。尋ねてみると、立って腰をあちこち動かすというか、ぐるぐる回したり、前後に動かしたりするんだそうです。DVDなどが色々出ているみたいですから、具体的にどうするのかは、そちらを見ていただくとしましょうか。
ついに痩せすぎに
骨盤体操でおかしくなった人は、Aさんが初めてではなく、以前にもありました。その女性(Bさんとしておきます)の場合は、骨盤体操をやりすぎた結果、やせ細ってしまって、骨と皮の状態でした。まことに恐るべきのは、骨盤体操。これほどの効果が出るとは驚きでした。だいぶ前のことで詳しいことは覚えていませんけれど、その時、これは警鐘を鳴らしておかないと、また犠牲者が出るなあと考えたことを思い出します。警鐘を鳴らしておくべきでした。
Bさんは骨の皮の状態になっているだけでなく、仙骨(骨盤の中央にある逆三角の骨)が小さく縮んでいました。仙骨は上半身の重みを受け取って支えている骨ですから、これが縮んで来ると、体重を支えきれなくなって、自然のメカニズムが体重を下げるために痩せ始めるのではないか。これは私の単なる想像です。
Aさんの場合は、体重がさほど減少していると思えませんし、仙骨が小さくなっているわけでもありませんでしたが、骨盤がありえないほど捻(ねじ)れているという結果を招いていました。なぜ、こんなに捻れるの、とあきれるほどです。どうして捻れたのかは分かりません。でも骨盤体操は骨盤を前後左右にゆすぶるわけですから、左右のバランスがおかしいと捻れても不思議ではないでしょう。
という次第で、骨盤体操をする時は、このような危険と隣り合わせであることを認識しておかなければいけません。健康法をしたために、却ってからだを壊すのでは何をしていることになるのか。もちろん、考案した人は、このような結果を招くとは予想していないに違いありませんが、こういう事故が起きた時にどう対処するのか。体操や健康グッズを考案する人はそこまで考えておかなければならないのではないか、と思いました。
ジムにおかれているような健康機械のたぐいも、同じような意味で警戒を要します。なにごとも「すぎたるは及ばざるがごとし」。
危険を知らせるお便り
さらに次のようなお便りもいただきました。これを読めば、やってみようという人もいなくなるのではないでしょうか。
―― 骨盤体操って確か去年の秋くらいに流行りだしたのではないでしょうか? 僕の知り合いの女性も、まじめに骨盤体操を取り組もうとした人がいました。その人は毎日体操をしていたらしいのですが、何となく腰の調子がおかしく感じる。それと、体操をした次の日は生理でもないのに出血があったらしいです。
で、試しに体操をしなかった次の日は出血がなかったそうです。それでもその人は何度か体操を試したらしく・・・ その後、体操をやめたそうです(僕も注意はしたのですが・・・)。体操だけで骨盤や仙骨にこれだけ影響が出てしまうなんて・・・ カラダの為に良い方向で使えたらいいのにと思いました。
( 2009. 06 初出 )