腕の開き

前腕の橈骨・尺骨という二本の骨が開くと、色んな障害が出てきます。骨の間隔を閉じさせて、これを改善することができないかを考えてみます。

nazuna
ナズナ

手首に水が溜まった

最近、手首の問題、特に前腕の捻れで苦しむ人が数日も続いています。もちろん手首の問題は決して珍しいものではありません。たびたび見かけると言ってもいいでしょう。ただ、それは他の問題に付随して見られるので、手首に主な問題を感じている人が、次々訪れるのは珍しい。

例を挙げてみましょう。手首の小指側には大きなぐりぐり(専門的には尺骨茎状突起と呼びます)があります。左手のその周辺が痛いと言って来られたAさん。見ると、手首のところに少し水が溜まっているらしい。ぶよっと腫れ上がっています。膝に水が溜まるのはよくありますが、手首は少ない。水が溜まるのは、ここの関節に問題が潜んでいて、そのため身体が何とか関節を守ろうと水を溜めて頑張っているわけです。

なおよく見ると、前腕の二本の骨、橈骨と尺骨との間隔が通常より開いているようです。そこで、橈骨を上げたり、手首の舟状骨(足の舟状骨とは別)とその隣の月状骨との関係を改善させたり、まずは準備をしておいて、それから橈尺の間を縮める操法をしました。こんな時は《反動》を使うことが多い。つまり一旦は両方の骨の間隔を開く方に力をかけておいて、パッと離す。この操作を何度か繰り返すと間隔が縮んできます。これでおおよそは改善しました。

hakobe
ハコベ

手指がしびれる

次の例。右手の親指と人差し指がしびれ、首の骨がおかしいと接骨院で言われたBさん。首を回すとしびれの程度が変わりますかと尋ねると、そんなことはない、との返事。これは首が原因ではない。首の骨は、接骨院でも整形外科でも悪者扱いにされますが、実際は首の骨が原因で手がしびれている人は少ないものです。親指と人差し指がおかしいという訴えは頻度が高く、たいていは指のどこかの関節が歪んでいるのが原因です。

右親指の付け根にある大菱形骨を調べてみると、掌側に圧痛があって、歪んでいます。また人差し指の付け根にある小菱形骨も甲側に歪んでいます。そこでこの二つを痛みがあるのと反対側から《愉気》をして修正すると、かなりよくなりましたが、指先に、まだ軽いしびれが残っていると言われる。そこで橈骨と尺骨の間隔を締めてみると、さらによくなったようです。最後のダメ押しに親指と人差し指が少しおかしいので、各指の中間の関節を調べます。すると人差し指の第2関節に歪みがあるようなので、これに圧痛と反対側から《愉気》をすると歪みが修正されました。

よく聞いてみると、数か月前に転んで、手を強くついて痛みが残った。その後、痛みは消えたが、しびれが残ったとのことですから、転倒のときに、強い力がかかってあちこちの関節が歪んだものと思われます。また手首を強くつくと、橈骨と尺骨の間隔が開くことも、気をつけるべき点でしょう。Bさんの手首を《反動》で締めてみると、プチっと音がして、二本の骨が、どこかで引っかかっていたことを思わせました。

himeodorikoso
ヒメオドリコソウ

指に力が入らない

第3の例。左の親指と人差指にどうも力が入らなくなったというCさん。コンセントに差し込むような動作をするのに、うまく指が働かないのだそうです。この例では、症状は違いますが状態はBさんに似ていました。親指の付け根の大菱形骨と人差し指の付け根の小菱形骨が歪んでいたこと、さらに橈骨と尺骨の間隔がやはり開いていたこと、等です。

この二本の骨の開きという問題は、あまり整体で重要視されているように思えませんが、たいへんに重要な問題であると、改めて認識しました。もうひとつ別の例では、開きを改善させただけで、腕の上部の三角筋(肩の付け根から腕にかけて膨らんだ筋肉)の突っ張りと痛みがすっと消えた例がありました。

こんな具合ですから──前腕の橈骨・尺骨という二本の骨は非常に開きやすい。開くと、手首や肩に影響する。言い換えると、手首や肩に問題があれば、まず橈骨・尺骨の開きがあると疑ってもいいのではないかと思うほどです。

( 2012. 01 初出 )