上腕の痛いスジ
肩が痛くて夜も寝られない人がいます。どこがどうなっているのか。
肩が痛い
肩がズキズキと痛くて夜も寝られない人がいます。私は肩がそこまでひどくなったことがなく、どんな感じなのか想像してみるだけですが、かなり辛いらしい。夜中に痛みで目が醒めるというから、そりゃあ深刻でしょう。四足動物と違って人間は前脚をぶら下げているので、肩が疲れやすいのは間違いありません。両腕の重みがズシリと肩にかかります。でもどうして、そこまで強い症状が出るのでしょうか。少し考えてみる必要がありそうです。
あなたの肩はいかがですか。異常がなくても、肩から腕にかけては圧痛を伴ってスジ状に硬くなっていることが多い。場所は肩先から上腕* にかけての前の方ですね。その辺りを押えてください。たいていの人は、スジばったものを感じるでしょう。押えると痛みを感じる人がいるかもしれないし、とても痛い人もいるでしょう。手を酷使するしわ寄せには違いないが、こんなスジができるのはなぜでしょうか。
* 上腕(じょうわん)は肩からひじまでの部分。ひじから下は「前腕」という。上腕を「二の腕」と呼ぶこともあるが、前腕が「二の腕」だという説もあって、ややこしい。「一の腕」はどこなのだろうか。
この場所には「上腕二頭筋」(じょうわんにとうきん)という筋肉があります。いわゆる力こぶの筋肉です。上は肩先ですが、下は前腕の橈骨(とうこつ)。この名前もよく出てきますね。前腕には二本の骨があって、その親指側の骨です。手の平を上にして、親指の付け根から肘までたどれる骨です。この骨は下がりやすい。上腕骨と関節をなしているけれど、前腕は捻れて動くので、引っ張られて下ります。
上腕二頭筋
上腕二頭筋は橈骨に付着していますから、橈骨が下がると上腕二頭筋が引っ張られる。つねに緊張することになります。では橈骨の下っているのを何かの方法で直してやれば、緊張も解けることになるはず。次の方法を使えば、うまく行くに違いない。
上腕のスジが圧痛を感じる側の腕を準備します。手の平を上にして、肘から先を伸ばしてください。上腕は体側に沿わせておく。その状態で手首を親指側に少し曲げる。難しくいうと橈屈(とうくつ)させます。つまり橈骨側に曲げるわけです。そうしておけば、手首で橈骨を少し押し上げる位置になる。
次に反対の手の指で、患側の手の薬指の第1関節から第2関節にかけて中指側の側面をさっと撫でる。20秒ほどそのままにしてから、もう一度撫でます。そのまま数十秒じっとさせておいて、上腕の圧痛部分を押してみると、痛みが消えているか、消えないまでもかなり軽減しているはずです。今の操作で、橈骨の下がりが修正され、元の位置に戻りました。すると上腕二頭筋の緊張がなくなりますから、痛みも消えることになります。
ついでに・・・
以上の方法で、一度で完全に症状が消えてしまえば言うことはありませんが、それは難しいかもしれません。何度か繰り返して、上腕の圧痛を消すようにすれば、頑固な症状がやがて消えて行くでしょう。あなたの肩が痛いなら、手当をしてくれるところを探す前に、まずはこの方法を試してみてください。
で、仕上げに次の操法もしておくと結果がいいと思います。掌(手の平)を上にむけて、薬指の第3関節から第2関節に向けて、そっと撫でます。そのあと数十秒ほどじっとしていると、くだんの部分が、さらに緩んでいます。どうぞお試しください。
え、なんですか、それでもまだ何か残っている? じゃあこうしてみてください。肩の痛む側を上にして、横向きに寝ます。難しくいうと横臥(おうが)する。そうして肩が悪い側の脚を反対側の脚を越して床に近づけて行き、全身を捻っていく。問題の肩は床にひきつけるようにしておきます。そうして、数十秒ほどそのままの状態でじっとしている。それで全身の捻れがとれて、肩の痛みがほとんど消えることでしょう。
( 2014. 02 初出、2014. 07 改訂 )