だれもが持つ恐れと不安
ぼやっとした恐れや不安をもっている人は、私たちが思っているより多いように感じます。これをどう解き放っていけばいいのか、その道筋を考えてみましょう。
恐れや不安を持っていないか
たとえ「心の病い」といわれるような状態でなくても、何か病いを抱えている人を見ると、意識の向かう方向に何か問題があるのではないかと感ずることがあります。
例えば、よく他人を批判したり、人の悪口を言ったりする人。こういう傾きがある人は、「恐れ」や「不安」の気持ちを強く持っていないでしょうか。人を批判したり悪口を言ったりすることで、【自分自身の存在が軽んじられる、自分が無意味な存在になってしまう】という「恐れ」や「不安」の気持ちを軽くしようとしているのではないかと思われます。ところが、これが病いを長引かせる。
からだの病いは、確かにからだの組織に起きるものですけれど、そこに意識の影を見ることが多い、と昔から言われています。いわゆる「病いは気から」ですね。意識に何か問題があることで、健康なら十分に行き渡るはずのエネルギーが十分に行き渡らなくなる。これが「気の通りが悪い」などと表現される現象でしょう。
恐れや不安の気持ちはだれの意識の中にもあるものでしょうが、特に強い場合、知らず知らずのうちにからだを硬くしています。おなかの筋肉が硬くなる。そうなると、そこを流れている血液がとどこおり、内臓にまで十分な血液が届かなくなります。これが内臓をいためている可能性が高い。よくストレスで病いになるといいますね。あれは、このようなメカニズムによるものでしょう。
感謝することで得られるもの
「恐れ」の気持ちが自分の中にあると気づいたら、どうすればいいか。「感謝」することではないでしょうか。批判したくなる相手であっても、悪口を言いたくなる相手であっても、自分と何かのことでつきあってくれているのですから、かならず「感謝」できる点があるはずです。
寝る前に、その日に出会った人を一人ひとり思い浮かべて、たとえいやな相手であっても「ありがとうございます」と言ってみる。口に出して言う必要はありません。相手の顔を思い浮かべて、心の中で「ありがとうございます」とつぶやいてみるだけでいいです。そうすると、批判したくなる気持ちや嫌な気持ちが薄らいできます。これを繰り返すだけで批判の気持ちが遠ざかっていくはずです。
からだの側から見ると、これまで硬くなっていたところが、これでゆるむわけですね。そうすると、血液の流れがよくなる。それによって内臓の傷んでいたところが修復されます。続いていた病いが次第に癒されていく、という順序です。
私自身は、ふと思いついて毎晩この感謝をするようになってから、すっかり寝つきがよくなりました。以前は、午後にコーヒーを飲んだりすると眠れないという厄介な体質だったのですけれど、コーヒーを飲もうが何を飲もうが、寝床に入ると1分もたたないうちに寝息をたてているらしい。あまりの寝つきのよさに驚いたと妻がよく言っていますから、これは間違いがありません。その日に出会った人すべてに心の中で「ありがとうございます」と感謝をしないうちに、ぐうぐう眠ってしまっていることも珍しくないらしい。羊が一頭、羊が二頭と数えるより、Aさんありがとうございます、Bさんありがとうございます、とやる方がよほど効き目があります。これは本当にありがたい。二重に感謝です。
勘ちがいする人があるといけないのでお断りをしておきますが、私はどんな宗教とも無関係です。宗教の活動として「感謝」をしているわけではありません。人に感謝することが生活にとてもいい効果をもたらしてくれることを実感するので、毎晩「ありがとうございます」と言ってから眠ることにしているだけです。こうしていると、自然と他人を批判する気持ちが遠ざかっていることに気づきます。どうぞ、みなさんもお試しください。