ばね指

手の指が曲る時にカクンとなる不快な「ばね指」。見ている人は面白くても、ご当人はさっぱり面白くありませんし、時によって動かす時に強い痛みを伴うこともあるようです。「ばね指」の人は、どこがどのように悪くなっているのか。これを考えてみましょう。

chicory
チコリ(布引ハーブ園)

構造上の特徴

「からだほぐし教室」では、日替わりメニューで色々なことをしていて、日によって内容が違います。どうなるのか、その日になってみないと分からない。ばね指の話しがちょこっと出た日がありました。常連のFさんが、ばね指です、と示指(人差し指)を差し出されました。なるほど、正真正銘のばね指に間違いありません。曲る時にカクンとなります。

ばね指の構造上の特徴は三つあります。

①前腕の親指側にある橈(とう)骨が下がっていること。
②手根部のいずれかの骨の位置が歪んでいること。
③指の第3関節のあたりにも歪みがあり、圧痛を感じること。

まず、前腕の親指側にある橈骨が下がっていること。私はこちらで別のことをしていたので、Fさんの相方になっていらっしゃったKさんが、Fさんの橈骨を上げてくださったようです。橈骨の上げ方は以前にどこかで触れたはずですが、もういちど書いておきましょう。

lily
ユリ

橈骨を上げる

前腕には親指側に橈骨、小指側に尺骨という二本の骨があります。手の平を上にしている時は、二本の骨が平行になっていますが、甲側を上にすると、橈骨が内側へ捻じれてきます。ところが人のする手作業は大半が甲側を上にしますから、たいていの人は橈骨がやや下がり、捻じれています。

するとどうなるか。橈骨は単に捻じれるだけでなく、手首側へ下がってくるのです。そのため、手首の小さな骨(手根骨と呼ぶ骨が8個ある)が歪みます。こうして、指を動かす筋肉の腱がどこかでひっかかった状態になるのが「ばね指」です。

ですから「ばね指」を改善するためには、橈骨を上げてやる必要があります。肘を直角に折り曲げた状態で、肘頭(ちゅうとう)とよぶ肘のでっぱりから数センチ外側・上に辿ったところに、上腕骨と橈骨の関節があります。関節のところが溝状になっていますから、すぐにそれと分かるはずです。この溝状の関節の手首寄りが橈骨の上端ですから、ここを二本の指で押さえて、少し橈骨を引き上げる方向に押さえます。この状態を90秒間つづけると、橈骨の下がりが改善されてきます。

almond
アーモンド

手根骨と指関節の改善

ばね指の構造上の特徴の2番目は、ばねになっている指の付け根にある手根骨の位置が歪んでいること。Fさんの場合、あちこち触ってみますと、示指のつけ根にある小菱形骨の位置が、少し掌側に歪んでいるようです。これをおなじみの反動で修正しました。しかしまだばね状態は改善しません。

構造上の特徴その3は、第3関節(指の付け根の関節)あたりのどこかに硬結があること。たぶんここで、指を動かしている腱がひっかかっているのだろうと想像されます。と言っても中を見たわけではないので、本当にそうかどうかは分かりません。この関節周辺をいじって、痛みのある掌側を何とか改善しようとしましたが、うまく改善しません。そこで愉気に切り替えました。硬結のある第3関節の掌側の部分に愉気を続けます。これでかなりマシになるはず。と思いながら愉気を続けるのですが、時々愉気を止めて試してもらっても、やはりばね状態のまま。

仕方がないので、Fさんにご自分でもう少し愉気を続けてくださいと言って、別のことを始めました。そうしてしばらくすると、Fさんが「直りました」と大きな声。なるほど見事にばね指が直って、スムーズが指の動きになっていました。ご自分で愉気を続けられたんですね。根気の勝負でした。

ばね指というと、手術しなければならない、と言われて手術もいやだと放置している人が多いようです。でも、動かすたびに激痛が出るほどひどくなる前に、手当をすれば直ることが多いようです。困っていらっしゃる方は、ぜひ一度お試しください。

( 2010. 06 初出 )