手の甲で変化する

手の甲が変化すると、からだのどこかが変化する。これは、いつでも起きていることです。

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ラムズイヤー

共鳴変化

最近、私は手の様子を非常に重要視しています。特に手の甲ですね。ここのところが変化すると、例えば背中が楽になったりする。あるいは腰の痛みがとれる。そういうことがしばしば起きています。

以前、私は「共鳴変化」の項目に次のようなことを書きました。

── セミナー参加者のYさんが2日目に腰が痛いと訴えられます。ホテルのベッドが柔らかすぎて体が沈み、前日に少しおかしかったのが、非常に悪化し、立てなくなってしまった。仙骨に愉気して何とか、歩けるようになったけれど、まだ痛い、特に背中が痛いという訴えです。あちこち触らせてもらいましたが、どこがどうなっているのかよく分かりません。
そこで手の甲で何とかしようと、私がYさんの手の甲をあちこち探っているうち、薬指の付け根の骨(中手骨)が硬いことに気づきました。どうも中手骨がおかしくなっているような感触です。そこで掌側から中手骨のあたりを軽くじっと押さえて10秒。ぱっと手を離すとYさんから「痛くない」と叫び声。そうです。手の骨が正位置に戻ったら、背中も正位置に戻ったんです。

その後のYさんの報告によれば、背の痛みはまたかなり戻ってしまったそうですが、こういう変化が起きたことは間違いありません。煎じ詰めていうと、【背の痛みが手の甲で変化した】ということになります。

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ラヴェンダー

手根中手関節

同じことを最近しばしば見かけるようになりました。【背が痛ければ、手の甲を見ればよい】というのが、私の中でほとんど法則のようになっています。股関節の違和感や痛みでも同じことが見られるのは「股関節の不調」で取り上げました。

「手の甲」といっても範囲が広いので、もう少し絞って考えましょう。特に中手骨(ちゅうしゅこつ)と呼ぶ部分です。この名前はすでに馴染んでいる人が多いとおもいます。手の指の付け根から手首に至る部分にある細長い骨です。手首の近くに手根骨(しゅこんこつ)と総称する細かい骨がいくつもありますが、その手根骨と手指の間にある細長い骨ということになります。この中手骨がそれぞれの指にあるので、片手で5本の中手骨があります。

さて、この中手骨と手根骨の間に関節があります。こんな手の真ん中に関節があるなんて皆んな気づいていないような場所です。片手で5本の骨があるので、5つの関節がある理屈ですが、一つ一つ詳しくいうのも複雑なので、「手根中手関節」と呼ばれています。だいたい手の甲の、手首の線から手先側へ3分の1ほどのところにあります(親指はもう少し手前)。足の「リスフラン関節」と同じ場所ですが、固有の名前はありませんので「手根中手関節」(しゅこん・ちゅうしゅ・かんせつ)という名前を使わざるをえません。この際親指は別にして、他の示指から小指までの4本指に話を限ることにします。4本指の手根中手関節に問題が隠れています。

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手根中手関節

甲が柔らかになると、背中も

こんな関節があることは、どうやって知ることができるでしょうか。誰かの手を貸してもらって親指は離しておき、自分の手の親指と4本指とで、相手の掌と甲の指に近い部分を挟むことにしましょう。そして反対側の手の四本指と親指とで、同じく手首に近い部分を挟みます。言葉で説明してもなかなか分かりにくいので、写真を上に載せておきます。

この写真のように相手の手を持って、写真のように挟んでいる両手をそっと軽く反らしたり、曲げたりしてみます。本当に軽くしてください。すると、比較的うごきやすい方向と、うごきにくい方向とがあることが分かりますね。関節が動いているからです。ここに関節のあることが分かりました。

次に、動きやすい方向に、ごく軽く動かして、そのまましばらくじっとしています。しばらくというのは、30秒くらい。そうしてさっきの検査をもう一度してみる。どちらでも同じように動くようになっていればOKですし、まだ同じ動きは無理で、やはりまだ若干の差があるというのであれば、もう一度ごく軽く動かして30秒ほどじっとしていてください。それで同じ位になっていればOKです。

これで手根中手関節の動きがよくなりました。すると、背中の動きが変っているのではありませんか。試してみてください。これで背中の痛みが変っていれば、【背中の痛みが手の甲で変化した】と結論づけられますね。

少し付け加えておきます。もしも上のやり方で、手根中手関節は変化したとしても、まだ手の甲に硬いところがある、ということだったら、硬いところの裏側、つまり手の平側に操者の手の指(どの指でもOKです)を当てて、しばらくじっとしてみてください。硬さがやわらいで来れば、背中も変化してくるはずです。

( 2012. 07 初出 )