親指の痛み
前腕の二本の骨が開いていると様々な影響が出ます。できるだけ締まっている方がよろしい。
拇指対向性
手首の状態には親指が大きく関係しています。特に「前腕操法」を試してみると痛みが出るような人は、親指に問題があるはずです。ですから、そのような人は操法を中止して、先に親指の問題を解決しておく必要があります。もちろん、親指と手首とは密接に関係していますから、親指に問題がある人は手首に問題があるともいえます。
人間の手が類人猿の手(というか前足)と大きく違うのは「拇指対向性」(ぼしたいこうせい)があることです。つまり親指とそれ以外の指とで物をつかめること。親指と他の指とが「対向」すること。見たところ単純なようですが、これが人間と類人猿との大きな違いであると言われます。
親指と他の指とで物をつかむため、親指は働き過ぎになりやすい。マウスをつかんでいる時も、親指はマウスの端に触れています。物をつかむわけではないがマッサージでもやるとなると、親指を酷使します。本当なのかどうか、マッサージを職業にする人は親指をつぶして初めて一人前になる、などという話を聞いたことがあります。
対蹠点から愉気する
その他、色々思い起こしてみても、親指は常に働いています。親指が故障を起こしやすいとしても無理はありません。事実、手の平側で親指の付け根を押えてみると、少し圧痛を感じるという人が多いに違いない。親指の付け根というのは手首のスジから1センチほど上、手相学で「金星丘」(きんせいきゅう)と呼ばれる掌のふくらみの手首に近いあたりです。その辺を押してみると、ズンとくるような痛みを感じる人がいるかもしれません。
あるいは逆に甲側、親指の付け根のやや人差し指に近い凹みがちなあたり。その辺を押さえると痛みを感じる人もいるでしょう。いずれも親指の付け根にある「大菱形骨」(だいりょうけいこつ)という小さな骨が掌側・甲側のどちらかに変位しているのが痛みの主な原因です。この痛みが消えれば、親指の問題はあらかた解決すると言ってもいいでしょう。他に問題があるとすれば、親指の付け根の関節が表裏どちらかへ変位していることです。
痛みが消え去るのに必要な操法は簡単です。痛みのある点と裏表で反対の点を「対蹠点」(たいせきてん)と呼びますが、この点に軽く愉気をすればいい。つまり指先を当てているだけで、たいていの痛みは消え去ります。強く押してはいけません。ごく軽く当てているだけです。対蹠点というと難しそうですが、要するに痛みのある点のちょうど裏側です。
親指と橈骨の関係
「弾発指」(ばねゆび)とか「腱鞘炎」(けんしょうえん)とか、難しそうな名前の付いている症状が、手には色々ありますね。いずれもこの辺りの問題が主なものです。「腱鞘炎」などと聞くと、何だか複雑なことが起きている感じがしますが、実は単純なことが多い。親指の付け根の辺りが何だかおかしいなと思ったら、すぐにこの操法をやっておくことです。特に手を酷使した後、何かおかしいと感じる時などにお勧めします。
ただし、それとともに必要なのは、前腕の開きを前もって締めておくこと。脚と同じです。前腕の二本の骨が開いているなら、必ず親指側の「橈骨」(とうこつ)が変位しています。そして、この橈骨が下っています。そのため親指の付け根が押えられて問題を生じるわけです。
( 2012. 12 初出 )