親指ライン

手の親指の外側のラインには問題が多い。それについて考えてみます。

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南天

手の親指は特別

手の拇指(ぼし、親指)には大きな意味がありそうです。親指に突き指などがあると、それが上の方まで引っ張り、腱鞘炎を引き起こすだけでなく、肩の不具合まで生んでいます。難しいのは、親指そのものには大した症状がないことで、本人は何も気づいていないことが多い。どうしたものでしょうか。

問題を起こしているのは、親指の関節です。まずは親指の先に一番近い関節(IP関節)と、その周辺を強めに押さえてみてください。あ、ここは痛い、という人がいるでしょう? つぎは親指の付け根の関節(MP関節)も試してみてください。関節だけでなく、関節と関節のあいだの部分にも、圧痛があるかもしれません。さらに親指の中手骨の付け根、つまり手首の部分にも問題が隠れているかもしれないので、そこも調べます。先の方から合わせて6個所を押さえてみる。

いや、突き指などしたことがないよ、とおっしゃる方も多いとは思います。でも記憶がなくても子どもの頃にやったかもしれません。たいていの人は、そんなことがあったのをすっかり忘れています。また、たとえ突き指はしていないにしても、親指で何かをグッと押さえる動作は、誰しもやったことがあるに違いありません。知らず知らずのうちに突き指に近い状態になったという場合もあるはずです。少し強めに親指の各部分をグッと押すと、意外に痛いところがあるかもしれません。

痛ければどうすればいいか。始める前に肩の検査をしておきます。肩を少し回したり挙げたりして、どの程度の違和感があるか、どの程度は動くかなどを調べておく。

その上で、まず簡単な方法から。圧痛のある親指を反対側の手でジッと握っていることです。そうすれば圧痛は軽くなってくるはずです。1回1分ほど試してみて、まだ痛みが消えないようなら、さらにもう1度くりかえします。これでまだ痛みが残るようなら、次の手を繰り出しましょう。

突き指があると、関節の部分がわずかながら正常位置より突っ込んでいます。そのため関節を引っ張るより押しこむ方がやりやすくなっています。関節の少し(数ミリ)指先に近いところをつまんでソッと押しこむ方向に動かしてみます。次にソッと引っ張る方向に動かしてみる。どちらが動きやすかったでしょうか。押しこむ方が行きやすいなら、それは突き指の可能性があるということになります。「ソッと」というのは文字通り「ソッと」であって、「グッと」押えると解らなくなりますから、くれぐれも、「ソッと」押えるようにしてください。

少しでも違いがあれば、次のようにしてください。各関節の数ミリ先の部分を反対の手の拇指と示指ではさんで、わずかに関節を押し込むような気持ちで、ジッと保つ。「気持ち」程度です。本当に「グッと」押さえるとうまく行きません。おおよその目安で1~2分そのままにしています。都合3個所の関節を次々同じようにして行きます。そうして圧痛を調べてみると、随分改善していませんか。まだ改善の程度が少ないなと思ったら、もう一度同じ操作をしてください。

そうして肩を動かしてみると、楽になっているはずです。特に肩が痛くて、という人は試してみる価値があります。もちろん、親指の圧痛も消えるか、かなりの程度は軽くなっているはずです。

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カカオの実

親指ライン

腱鞘炎の操法をしている時でした。腱鞘炎の時は、必ず前腕のひじと手首のあいだにある親指側の橈骨(とうこつ)が下っていますので、橈骨を上げるようにするのですが、この時はいくらやっても上がらない。これはおかしい、どこからか引っ張られているに違いないと触診してみると、親指の中手骨に圧痛がありました。その先のMP関節、IP関節にも痛みがあり、爪の下にまで圧痛がある。(IP関節は親指の一番先の関節、MP関節は二番目)

それで、これだ、と気づいた次第です。親指から始まり、手首の橈側、橈骨、ひじを経て、上腕二頭筋、肩と異常が続いています。ですから「親指ライン」と呼んでもいいでしょう。あるいは鍼灸に詳しい人であれば、肺経に沿っている、というかもしれません。(肺経についてはネットで調べてください)

以前から手の指が肩に大きく影響していることがしばしばあると言ってきたことはご存知でしょう。中でも親指を始点とするラインは特に問題が大きいように感じられます。例えば腱鞘炎の場合に、このラインに問題がないかを調べて問題がありそうなら、指先から順に解決していけば、問題が解決するのが早くなるはずです。他にも、バネ指、ひじ痛、肩の問題、上腕の問題、手首の問題などに応用できます。

このラインの問題は「突き指」だけではありません。指の関節が左右に変位している場合もあります。ほんのわずかな変位ですが、関節の歪みが運動を制限していたり、指全体の姿を歪めていることがあります。早くいうと指が曲がっている。

そういう場合は、突き指の時の方法とは少し違ったやり方になります。指の関節を左右にほんのわずか動かしてみます(もちろん大きく動くことはない)。すると、少し動く感じの方向と、まったく動かずに固まっている感じの方向と、違いが出てきます。少し動く感じの方向に「ソッと」動かす気持ちで、しばらく(1分~2分ほど)じっと持続すると、反対側に動きが出てくる。それで問題は解決です。

このようにして「親指ライン」の歪みや機能不全を整えていくと、肩の動きや肘の動き、手首の動き、あるいは痛みなどが解決していきます。手に存在しているラインは「親指ライン」だけかといえば、どうやら「小指ライン」も存在しているように感じられますが、まだ探索中といったところです。

はなはだ理屈っぽいようですが、肩や肘や手首やその辺の問題を抱えている人は、ラインに沿って問題がないかどうか自分で調べてみるといいでしょう。やり方は難しくありませんが、指を自分で整えるのは、少し難しいかもしれません。誰かに頼んでやってもらってください。

( 2014. 04 初出 )