手指の痛み
手の指が痛いという訴えをよく聞きます。水不足とかリューマチとかは別として、指の関節が痛いのは、ほとんどが関節のズレによるもので、ズレを直せば痛みは消えます。親指の付け根の痛みとか、薬指の第二関節の痛みなどは、たいていがズレだといっていいでしょう。
〈 観察 〉→〈 判断 〉→〈 実行 〉→〈 確認 〉
ではどのようにしてズレを直せばいいのかが課題になりますね。どこの関節であれ、関節のズレを直すには〈 観察 〉、〈 判断 〉、〈 実行 〉、〈 確認 〉という4段階が必要です。これは指に限らず、からだのどこが対象でも同じことです。整体のすべてがこの4段階でなりたっているといってもいいでしょう。中でも特に〈 観察 〉と〈 判断 〉とに正確さを要求され、この二つがポイントです。ここがいい加減だと、あとの〈 実行 〉が間違ったやり方になる可能性もありますから。
念のために言い添えておきますけれど、ここでいう〈 判断 〉は決して観察結果に名前をつけることではありません。例えば観察結果に「関節炎」という名前をつけたところで何も変わらない。ただ関節が炎症を起こしているところに、「関節炎」と名前を付けたに過ぎませんから。しかもズレを直せば痛みがとれるとすれば炎症が本当にあるわけでなく、押したり動かしたりすると痛みが出るだけですから、「関節炎」という名前すらも正確とはいえません。名前にこだわっても何の役にもたたないでしょう。
プラン・ドゥー・チェック
ところで世の中には、似た発想のものとしてプラン・ドゥー・チェックという3段階が唱えられています。この場合にいうプランとは、自分(たち)の想像の世界をもとに立てた何かの計画ですから、〈 観察 〉・〈 判断 〉とは少し違うかもしれません。ただプランをイメージとデシジョン(決定)とに分ければ、私のいう4段階と同じになります。やはり私はこの2つを分けて考えた方がいいと思います。プランはいくらでも立てられるけれどデシジョンができないということが、よくあるからです。実行力のない人は、実は判断力が欠けているのではないでしょうか、実行ができないのではなくて。判断さえできれば実行できるわけですからね。
〈 観察 〉
話を元にもどして。例えば、親指の付け根が痛むとしましょう。まずは〈 観察 〉です。指の痛みを訴えている人に親指のどの辺りが痛むのか、あちこちを押さえて聞いてみる。「そこは痛くない」とか「あっ、その辺は痛い」とか答えが出てくるでしょう。細かく色々なところを押さえてみます。注意するのは、関節の位置です。どこが関節のつなぎ目なのかをよくみて、その両側を押さえ、どちら側に痛みがあるのかを〈 観察 〉します。指の骨の側に痛みが出るのか、それとも中手骨といわれる根元の骨の側に痛みが出るのか、手の甲側か、それとも手のひら側か、あるいは親指側か、小指側か、その点を細かく観察します。
〈 判断 〉
すると痛みの出るポイントが次第に分かってきます。例えば、指の骨の内側(小指側)に痛みが出るとか、それも手のひらに近いところに痛みが出るとか、いろんなことが分かってくるでしょう。それで関節がどちらにズレているかが〈 判断 〉できます。これには慎重を要します。間違っていると直せませんから。
〈 実行 〉
判断 〉が確定すれば、今度は〈 実行 〉です。親指の内側の手のひらに近いところに痛みが出るとすれば、関節がそちらの方向にわずかながらズレているわけです。したがってそれとは反対の方向に関節を動かせば直すことが出来ます。痛みが出る方向と逆、つまり「対蹠点」(たいせきてん)の方向に動かせばいい。ただし、ただその方向に動かすだけでは、うまく行かないかもしれません。関節には両方から力がかかっていますし、形も平らではなく少しくぼみがありますから、ここの力を減らしてから動かすのが楽です。指を少しひっぱりつつ、指を対蹠点の方向に一瞬で動かします。おずおずやったり、ゆっくりやったりでは効果がでません。一気に思い切ってやるのがコツです。「痛くない」という答えが出るまでこれを何度か繰り返せばOKです。
〈 確認 〉
最後に〈 確認 〉。もう一度やってもらっている人に、動かしてみて下さいとか、押さえてみて下さいといって、痛みが取れたか出なくなったかを確認してもらいます。これでおしまい。あとは感謝されながら、おいしいものでもご馳走してもらうことですね。
( 2007. 11 初出 )