親指のつけ根
手の親指が痛い、腱鞘炎、ばね指、などの訴えをよく聞くことがあります。どうすればいいでしょう。簡単な解決法はないものでしょうか。
親指のつけ根は壊れやすい
人の手は類人猿の手と違って、親指を残り4本の指と向かい合わせて使える仕組みになっていますね。チンパンジーなどでもこのようなやり方が少し見られるということですが、人ほどうまくはありません。ですから人の場合、5本の指の中で、いろいろな作業に親指を使うことが一番多いことになります。
巧妙な仕組みになっているのはいいのですけれど、逆にそれが災いして、人は手を使いすぎることが多いので、色々に壊れます。親指が壊れているとすると、その多くは親指のつけ根に異常があります。親指のつけ根の長い骨と、その手前にある大菱形(りょうけい)骨という小さな骨のあいだに関節があって、これがズレていることが多いです。
ここは鞍(くら)関節という名で呼ばれている仕組みで、二つの馬の鞍が互いに凹んだところで組み合った形の関節です。この仕組みのおかげで、人の親指は自由な動きができるようになり、うまく他の4本の指と向かい合わせることができようになりました。
鞍関節のズレ
ここが少しずれたまま固定されると、圧痛(押すと痛む)が出るようになります。親指の付け根をあちこち押してみます。あちこちといっても、しつこく試すことが必要です。親指を色んな方向に動かしてみて、どこにつけ根の関節があるかを調べます。関節の位置が分かったら、その関節から指先側にある長い骨(中手骨)側か、それとも手前の小さな大菱形骨側か、どちらに圧痛があるかを、押して調べます。
どこかに圧痛があれば、この鞍関節がズレているでしょう。でも、漠然と鞍関節がズレているととらえただけでは十分じゃありません。大菱形骨が掌側にズレているのか、それとも甲側にズレているのかを確定しなければなりません。
それが分かれば、この大菱形骨の位置を直してやればいいことになります。圧痛点とは逆の側、つまり、圧痛が甲側にあれば掌側、圧痛が掌側にあれば甲側が対蹠点(たいせきてん)です。対蹠点というのは、圧痛点の逆側にあって、ここを操作すれば直る点です。対蹠点から少し強めに押して、ぱっと離す操作を2~3度やれば、圧痛が消えて大菱形骨の位置が正しくなるでしょう。
この原理は大菱形骨とは違う、他の手根部(手の付け根)にある骨についても使えます。机に止まっている蚊を殺そうと、バーンと叩いたら、手根のどれかの骨がずれて、手が痛いとやって来た人がありました。
親指のズレがある時は、肘(ひじ)にも問題のあることが少なくありません。前腕にある橈骨(とうこつ)という骨が下がっていることが多いからです。これも直した方がいいのですが、それはまた別の項目で取り上げましょう。
( 2009. 05 初出 )