ヘバーデン結節
手指の第一関節がはれる「ヘバーデン結節」という症状があります。どう対応すればいいかを考えて見ましょう。
手指の第一関節がはれる
ヘバーデン結節 Heberden noduleは、手の指の一ばん先にある第一関節がはれ上がって硬くなり、痛む症状です。困って整形外科を訪れると、名前を教えられて治りませんと言われ、失望して帰ってくる人が多いようです。中には「ヘパーデン結節」の間違いではないのか、と思われる方もいらっしゃるでしょうが、「ヘバーデン結節」が正しい。
イギリスのウィリアム・ヘバーデン(William Heberden 1710-1801)という医師が初めて報告し、この名前がつけられたからです。リューマチの場合は第二・第三関節の痛むことが多いので、区別できます。X線で観察すると、関節部の爪先に近い部分の骨が、甲側に増殖して盛り上がっているそうです。確かに見た目にもそのように感じられます。医学の世界では的確な治療法が明らかになっていないようです。
水が不足している?
この症状の人を多く見かけます。なぜだかは分かりません。女性に多く、たいていは中年の人ですね。遺伝ではないといいますから、炊事が多いことに関係するのかな、と思ったりします。ただ、共通することがあります。それは水の飲み方の足りない人が多いことです。しかもコーヒーや紅茶をよく飲む人に多いのではないか。コーヒーを日に5~6杯飲むという人が多い。水の飲み方はどうですか、と聞いてみると、コーヒー以外はあまり飲んでいませんね、というような返答が多いように思います。
先日、時々来る60歳代の女性が、手指が痛いと訴えていましたので、指を見ると明らかに「ヘバーデン結節」です。例によって「コーヒーを一日に何杯ほど飲みますか?」と尋ねると、「6~7杯」という答え。「ああ、やっぱり。それは多すぎますよ」。
以前、からだの水不足について書いたことがありました。からだの水が不足すると、まずどうしても水の必要な内臓に水が配られます。すると末端部まで水が十分に届かなくなって、指の水が不足することは十分に考えられます。なぜ骨が盛り上がってくるのかについては、的確な説明がないのですけれど。
では水が足りないことと、カフェインを多く摂取していることとの間に、何か関係があるのでしょうか。カフェインには腎臓でいったん濾された水分が再吸収されるのを妨げる作用があります。つまり利尿作用があるわけで、コーヒーなどを多く飲む人は、水不足になりやすいでしょう。
本当にカフェインが原因かどうかはさておくとして、水を飲むのは簡単なことです。水道水ならコストはゼロに近いですから、ヘバーデン結節のある人、あるいはその兆候のある人には、コーヒーやお茶類を減らして水を飲むことをお勧めしています。事実、コーヒーを止めて、きれいな山の水を多めに飲むようにしただけで、痛みがなくなった人がありました。
海外にも同様の記事
同じような趣旨の記事がないかと思って探してみると、「yahoo知恵袋」の英語版に次のような記事がありました。https://answers.yahoo.com/question/index?qid=20070510094351AAr1NYE
食養の立場からのアンサーらしく、食べ物に注意を喚起する内容となっています。ヘバーデン結節の対策を要点だけ訳してみます。
1) 赤身の肉、乳製品を減らすか避ける。
2) 白砂糖を減らすか避ける。
3) カフェインを避ける(コーヒー、紅茶、コーラ飲料、チョコレート)
4) 食物アレルゲンを避ける・・・。
5) 塩素を含まない水をたくさん飲む。
6) 新鮮な果物や野菜を多くとるようにする。
7) おやつは果物やナッツ、種子がよい。
特に3)が目が止まります。この筆者がカフェインとヘバーデン結節の関連に気づいているからです。ちなみにコーラにカフェインが入っているのは知っているが、チョコレートにはカフェインが含まれていないと思う人がいらっしゃるかもしれません。しかし、チョコレート(あるいはココア)にはテオブロミンというカフェイン類似物質が含まれているため、カフェインと同様の作用があると言われています。また5)も注目に値します。浄水器を通すか、しばらく蓋のない容器に入れておいた水を飲むか、あるいはいったん沸騰させた水を飲むか、そのいずれかで塩素は空気中に消えるからです。
ただ、水を飲むことに関しては、水を取りすぎるとよくないという反対意見があります。ところが一方、水をどんどん飲むようにという野口晴哉や、『水療法』のバドマンゲリジのような意見もあるわけで、どちらが正しいか判断するには、多くの人を対象にした比較研究が必要です。私ひとりで結論を出すのは難しい。人ひとりひとりの条件によって、どちらが正しいか異なってくる、というのが本当のところではないか、と個人的には思っています。水を多めに飲んでも何も問題がない人は、それを続ければいいですし、水を多めに飲むとどうも具合が悪いという人は控えればいい、ということでしょう。
ヘバーデン結節のある人は、カフェインの入ったコーヒーやコーラ、お茶類(紅茶、緑茶、番茶、ウーロン茶など)を止めて、麦茶や薬草茶、ハーブティーなど、カフェインを含まないものを多めに飲むようにすればどうでしょうか。私自身にヘバーデン結節はありませんが、「ルイボス・ティー」を飲んでいます。
手指以外にも?
以上の記事を書いたあと、福岡県の整体屋さんから次のようなお便りをいただきました。手指以外にもヘバーデン結節と似た症状があって、それが同時に解決した、というお話しです。興味深いので、以下に引用します。
―― 朝方には腕から手指にかけてこわばりと痛みがあり、日中には足の甲の痛みがあると訴える男性がいました。へバーデン結節のように、第一関節の膨れがあったわけではありません。主訴は腰痛だったのですが、そちらの方は解消しておりました。手足のこわばり・痛みといっても、圧痛はなく、常時痛いというわけでもありませんでした。
最初は、足の骨がズレているのかと思い、圧痛を調べていったり、腓骨の下垂か、股関節か、扁平足気味だったのでそれが原因か、などといろいろと調べ、施術していたのですが、なかなか解決せずにいました。
それで講習会の際にお聞きした別所先生の話をふと思い出し、「コーヒーはお好きですか? 水分は取っていますか?」と尋ねると、コーヒーカップよりも少し大きいカップに一日5、6杯飲み、コーヒー以外の水分はあまり取らない。そして排尿回数が多いとのことでした。これは飲み過ぎだと思い、「試しにコーヒーの量を減らし、今までより水分を取ってみてもらえますか」と提案しました。
そして一ヶ月後の来院時の報告。なんと、量を減らすどころか一ヶ月間コーヒーを断ち、水分も今までより飲むようにしていました。見てくれ、朝の手のこわばりはあるものの痛みはなくなり、両足の甲は日中に痛くなっていたのが、現在は解消したと報告してくれました。こんなにうまくいくとは思いませんでした。
手のこわばりや痛みを訴える方の話を聞くと、コーヒーをよく飲み、水分不足の方が多いように思います。もちろん全ての足の甲の痛みがこれで解決するとは思いませんし、たまたまなだったのかな?とも思いましたが、手の痛みと同時期に解消したのは事実ですので原因のひとつと考えてもいいのかなと思います。
その方には大変、感謝されました。こちらもその方には感謝しています。その方が提案通りに実行してくれたからこそですし、また一ついい経験ができました。
注目すべきは、 (1)腕にもこわばりと痛みがあった、(2)足の甲にも痛みがあった、この2点です。ヘバーデン結節といえば、指先の症状と思われていますけれど、関連する症状が腕や足の甲にもあったことになります。ですからヘバーデン結節の症状を持った人は、腕や足(脚)にも同じような状態がないかどうか、よく観察してみることが必要でしょう。水が足りずに色々なところがこわばるのは大いに考えられることですから。
( 2009. 07 初出 )