腓骨の捻(ねじ)れを正す
腓骨は下がるとともに次第に後ろへ回って行くのではないか。そのために膝や足首に大きな負担をかけているのではないか。これが今回のテーマです。
くるぶしの高さ
下腿(かたい、ひざより下)の外側にある腓骨(ひこつ)という細い骨は全身に与える影響が大きいので何度も取り上げている骨です。重心が外になるにつれ腓骨の下がる現象があります。逆に腓骨が下がるにつれて重心が外へズレて行くというべきかもしれません。
「腓」は日常あまり使わない字です。漢和辞典を開いて訓読みを調べてみると「こむら」と書いてあります。「こむら返り」の「こむら」です。つまり「ふくらはぎ」。訛(なま)って「こぶら返り」ともいいいますね。
仰向けに寝てみてください。膝の膝蓋骨(しつがいこつ、お皿)がちょうど上に来るように調節します。そうして内踝(うちくるぶし)と外踝(そとくるぶし)の一番とがっているところに左右の手の指先を当ててみます。どうですか。床から左右の指までの高さは同じくらいでしょうか。
くるぶしが捻れてくる
たいていの人は外側の指(外踝に当てた指)が内側の指(内踝に当てた指)よりも床からの高さが低いでしょう。数ミリ低い程度なら問題はありません。ところが1センチも低いとなれば問題が潜んでいると考えた方がよい。外踝は腓骨の下の端です。腓骨が後ろへ回っている可能性があります。
腓骨が「後ろへ回っている」と言われてイメージがお分かりですか。下腿には腓骨だけでなく太い脛骨(けいこつ)があって体重を支えています。二本の骨が少し捻(ねじ)れると足首が内外へ回ります。
前腕と同じような構造です。腕の方がよく分かりやすいでしょう。腕を内外へ捻って遊んでみてください。動きのいい人なら腕を伸ばして捻ると360度ほどは回るはずです。もしも回らなければ前腕や肩が硬くなっていますから要注意です。
腕も脚も何度も同じ方向に捻りを繰り返していると、やがて捻りが固定して来ます。腓骨が後ろへ回るのはこの現象だと考えられます。O脚の人は腓骨が後ろへ回っている。言い換えると外踝が内踝に較べて後ろへ行っています。見かけの上でO脚でない人でもそうなっていることが多い。
改善の方法
腓骨が後ろへ回っていればどうするか。簡単です。まず本人を仰臥させます。仰向けに寝せる。操者は操作する脚の横に坐ります。本人の左脚として説明します。操者は右手の親指を腓骨の骨頭(膝の少し下方外側のぐりぐり)に当てる。同時に左手の親指を外踝に当てる。それぞれ一番でっぱっている点に当てればよろしい。力をかける必要はありません。それぞれに親指を当てじっとしている。他の四本の指は軽く脚に載せておけばよろしい。
しばらくすると本人の脚がピクっと外へ動く感触があるかもしれません。そんな場合はピクっが何度か続きます。そのまま続けること数分。さて本人に立ってもらいましょう。どんな感じか尋ねてみると「重心が内へ寄った」という感想が出てきます。O脚状態が少し改善しているわけですね。
この操作を開始する前に足首にある距骨(きょこつ)を少し強めに押さえて観察しておくのもいい方法です。内踝の1センチほど下をぐっと押してみる。「そこは少し痛い」という反応が返ってくることが多い。距骨がやや内側へ捻れこんで来ているわけです。
そこで上記の操法をします。終わってから距骨のところを押してみると痛くない。圧痛が消えている。腓骨が下がり後ろへ回ると距骨が外側から腓骨に押されてやや内側へ寄っていたことが分かります。距骨が元に戻ったために重心が内寄りになりました。
この操法で腓骨の位置がよくなる。同時に距骨の位置もよくなって一石二鳥という結果になりました。腰痛の人などは重心側の腓骨がこのような状態になっていることが多い。これを直しておかないと腰痛を繰り返します。操法をする人は注意が必要です。
( 2013. 05 初出 )