骨盤の捻れと膝の関係

骨盤が捻れると膝が悪くなりますが、このことがあまり知られていないのではないでしょうか。

rotus

膝がカクッとなる

ときどき膝がカクッとなる、という人がいると思います。慣れると「またか」で済んでしまうにしても、初めてこんな経験をすると自分の膝に何か異常なことが起きてしまったのかと心配になって不思議ではありません。この現象は何を表しているのでしょうか。

ちかごろ若いMさんが毎日のように操法の見学に朱鯨亭に通って来ています。見学に来た人は、講習とは違った操法の実際をみて、「眼から鱗が落ちる」という経験をするかもしれません。講習では、それぞれの場合を個別に取り挙げ、この場合はこう、その場合はどう、と一つ一つ説明しますが、現実の人のからだは無限に複雑で、けっして講習向きにはなっていません。複雑な事柄が、複雑なまま目の前にあるわけですから、そのたびに細かく分析している暇はありません。複雑なことがらを、いっきにそのまま処理しなければならないので、おのずから講習とはちがう局面があります。

そのMさんが帰りがけに「歩いていると脚がカクッとなった」と言われる。こんなことは初めてなので、とても心配になったそうです。「それは多分、膝が反ってるからや」と私。さっそく仰向けに寝てもらって膝を調べてみる。膝そのものを調べるというより、大腿部を押え、足首を持って上に持ち上げてみます。

もちろんこうしても普通は上がりません。上がるのは、膝が一直線より上に上がることを意味しています。別の言い方をすると、膝が反っていることになる。「反張膝」(はんちょうひざ)と呼ぶこともあります。さてMさんの右足を上げてみると床から少し持ち上がった。左足は上がらない。一体これはどうなっているのだろうか。

tuwabuki
ツワブキ

骨盤の捻れということ

左右で上がり方が違うのは、骨盤に「ねじれ」があることを表しています。ここで「ねじれ」とは、膝が痛くなった側の骨盤(腸骨)が少し後ろに来ている、反対側は前に来ている、という状態を指しています。今回の膝の反りは逆の現象で、膝が後ろに来ているのでなく、前に出ているため、膝が反ってしまっているわけです。

そしてその原因が骨盤の両側にある大きな腸骨にあって、腸骨が少し前寄りになって「腰が反る」状態になると、「膝が反る」状態が現れてくることになります。逆に「腰が曲がる」状態になると、「膝が曲がる」状態が現れてくることになります。膝が曲がっても、膝が反っても、それぞれ具合が悪い。

2つをまとめると、膝の故障は骨盤の「ねじれ」に原因がある。一方の腸骨が前に出て、他方の腸骨が後ろに引けていると、どちらかに痛みが出てくる。よく「変形性膝関節症」などという勿体ぶった名前が付けられていますが、膝関節が「変形」していることに本質はない。骨盤が「ねじれ」ていることに本質があります。もしも膝関節が変形しているとすれば、それはあくまで現象に過ぎません。ここが取り違えられているため、一向によくならない。

chikori
チコリ

捻れの影響は深い

骨盤の「ねじれ」ということに、もう少し説明が必要でしょうか。何がどうねじれているかが分かりにくいかもしれません。骨盤の両側には「腸骨」という大きな骨があって(腰骨と呼ばれています)、一方がやや前寄りになり、一方がやや後ろ寄りになっている──中央の仙骨をはさんで、左右の腸骨がねじれているわけで、そういう状態を骨盤の「ねじれ」と私は呼んでいます。

だとすると、膝痛を直すためには骨盤の「ねじれ」を取って、「ねじれ」のない状態に戻してやればいいことになります。このことは、肩などの痛みについても言えることで、昨日は二人の「五十肩」の全身を「ねじる」ことで、「五十肩」がほとんど消失しました。「ねじれ」には、それほどの深い影響があります。それについては、いずれまた。

( 2014. 06 初出 )