筋トレの功罪

筋肉を鍛える「筋トレ」には、それなりの効果があることでしょう。でも副作用があることを忘れることができないように思いますが、どうでしょうか。

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赤い靴の女の子

走ると下腿が開く

筋トレで筋肉カチカチ状態になり、不調を訴える人があいついで来たので、それについて書いておきます。一人は路上のジョギングで、一人はジムのランニング・マシーン(ルーム・ランナー)であるという違いはありますが、いずれにせよ「走る」ことで脚の筋肉がカチカチになり、不調を訴えている点では同じです。

よく私は「歩く」ことを勧めていますが、「歩く」と「走る」とがどう違うかといえば、「走る」場合は身体がほんの一瞬であっても空中に飛んでいる点でしょう。そのため、着地する時に「歩く」のとは格段に違う大きな力が脚にかかる。

すると下腿(ひざから下)の脛(けい)骨・腓(ひ)骨という二本の骨に大きな力がかかり、二本の骨の間が開いてきます。開いていることがどうして分かるかといえば、観察ポイントは色々ありますが、例えばひざのすぐ下の外側にある出っ張り、骨が出っ張って感じる腓骨頭(ひこっとう)という部分が大きく感じます。この大きさが左右で違う人は、大きい方の脚の骨が開いています。

それだけではありません。「下腿」をぐっと握ってみると「硬い」。だじゃれで言っているのではなく、本当に硬くなっています。しかも太くなっている。よく「骨太」とかいいますが、骨の太さ自体にさほどの違いはないはずです。骨が力に耐えて太くなることがあるのかもしれませんが、それより二本の骨の間隔が開き、そのため周囲の筋肉が異常に緊張し、カチカチになっています。

特に太くなっていることが分かりやすいのは、足首の部分です。問題のない脚なら、足首の部分は、ほっそりしているものですが、開いている人では、本当に太くなって、両手で握らなければならないほどになっているでしょう。それから下腿をぐっと誰かに握ってもらってもいい。気持ちがいい、という人は、開いています。開いていなければ特段に気持ちがいいこともないですから。あるいは人によって、握られると痛いと感じるかもしれません。

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関帝廟の関羽

下腿が開くと骨盤に影響

開き方が左右でほぼ同じならまだ問題が大きくないのですが、左右の状態が違う、つまり片方がもう一方よりさらに太くなっている状態では、腰に影響があります。そちら側へ骨盤が引っ張られて傾いていることがある。

もちろん、そんなことになれば、骨盤が傾くだけでは済みません。その上に載っている背骨も捻れてきます。ヘタをすると側弯と言われるような状態になりかねません。具体的な症状としては、ひどい肩こりを起こすことがあると思います。上半身の筋肉も硬くなってきます。

ざっとこんな理由で、ジョギングを硬い路面の上で続けたり、ジムに通ってマシーンで走り続けるのはお勧めできかねます。「筋トレ」という名前からいいことのように思われているけれど、同じ筋肉ばかり硬くしてしまうと、全身のバランスが崩れ、かえってよくない。

困った状態になっている人を、これまでに数多くみてきましたから、筋トレで硬くなっている人を見かけると、何とかしてあげたい気持ちになります。本当に「筋トレ」をやりたいのであれば、専門家の指導を仰ぐべきでしょう。

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日本郵船氷川丸

脚絆が必要だ

かつての兵士は、下腿の二本の骨が開くのを防ぐ目的で「ゲートル」というものを下腿に巻いていましたね。昔の人たちが使った「脚絆(きゃはん)」も同じ目的のものです。脚絆を使えば、街道筋を一日に40キロ歩いても、何とか旅を続けられたのでしょう。

先日、西国街道の宿場に残っていた記録に一日の行程56キロというのを見て仰天したものです。これが大名行列の記録ですから、さらに驚きます。行列の中には身体の強健でない人もいたでしょう。病人も出たに違いない。それでも一日平均40キロを歩いたとすればどんな具合に歩いていたのか。興味を唆られるところです。

いずれにせよ、下腿が開きっぱなしの状態を続けるのは、どう考えてみてもよろしくありません。開いている側に体重が余分にかかっていますから、年令を重ねると、ひざが痛くなる確率も高い。かなり無理をしていることになります。

( 2012. 04 初出 )