膝痛 (7) なぜ膝が痛むのか

膝が痛む人のお皿がどうなっているか。それをよく観察してみる必要がありませんか。

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お皿の動きが悪い

前回は、膝は骨盤・腰椎・足首を見ることが必要だといいました。でも膝そのものには何も問題がないのだろうか。身体のどんな問題にしても、全身が関係しているのだから、膝も全身と関係があるのではないでしょうか。

確かに膝が痛くなる原因は膝にもあります。特に高齢者の膝が痛むについては膝の皿(膝蓋骨、しつがいこつ)が問題です。昨日来られた女性を、仮にYさんとしておきましょう。膝の痛みで来られて、前回、かなりよくなっていました。でも階段の昇降がまだ痛むと言われます。それから椅子に坐って膝を伸ばそうとすると伸びないという。床の上なら伸びるけれど、椅子から伸ばそうとしても突っ張るだけでダメだそうです。

お皿を見るとカチカチになっていて、ほとんど動きません。子どもや若い人なら、お皿がグラグラと動くものですが、高齢者の場合には動かなくなっていることが珍しくありません。年齢とともに硬くなって行く傾向はあきらかで、「加齢」という言葉をむやみに振り回すのはどうかと思いますが、ある意味では「加齢」現象と言えなくもありません。

このお皿は太ももの前にある大腿四頭筋(だいたいしとうきん)という筋肉の中に浮かんでいるという、ちょっと変った骨で、筋肉が硬くなると伴って動きが悪くなります。こんな場合にどうするか。自分でもできることが色々ありますから、膝の痛みで困っている人は試してみてください。

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チコリ

筋膜のばし

まず一つは大腿四頭筋の緊張を解くことです。そのために「筋膜伸ばし」と呼んでいる操法をやってみましょう。膝を抱えて坐ってください。言い換えると、体育坐りという坐り方です(この坐り方を体育館などで長時間続けるのは、大きな問題だと考えていますが、短時間だったらいいでしょう)。初め膝の曲げ方は少しにしておいて、操法をするにつれて膝を曲げて行きます。

膝のお皿のすぐ手前を両手の親指で強く押さえて、膝をぐーっと曲げて行きます。すると、お皿と親指のあいだが伸びてくるでしょう。そうして10秒ほどそのままにしています。膝をもとの位置に戻して、親指で押さえる位置を少し下にずらします。指一本分ほど下で結構です。そしてまた同じ操作を続けます。つまり、膝のお皿のすぐ手前を両手の親指で強く押さえて、膝をぐーっと曲げて行きます。そうして10秒ほどそのままにしています。これを股関節の辺りまで繰り返し続ける。すると、太ももの筋肉が緩んできます。

これでお皿を動かしてみると、わずかであっても動きが出て来ているはず。まだカチカチであれば、もう一度同じ操作を膝から股関節まで繰り返してもいいでしょう。

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七段花

お皿を誇張法で緩める

次はお皿に手を触れて、左右・上下に動かしてみます。左には動くが右には動きにくいとか、上には動くが下には動きにくいとか、動きの差があるはずです。普通の感覚でいうと、動きにくい方へ無理に動かしてみたくなるかもしれませんが、ここでは逆に動かしてみます。つまり、動きやすい方へ少しだけ動かして、そこでじっとしています。「少し」というのは一ミリ程度でいいです。あまり力ずくでグッと押さえるのでなく、そおっと押す程度の力が好ましい。そうして1~2分そのままにしています。終わって調べてみてください。お皿の動きが少し改善しているはずです。この操作を上下方向にも行います。まだ動きが悪ければ、もう一度くりかえしてもいいです。

さて、これでお皿の動きが少し変って来ました。Yさんに椅子に坐って脚を伸ばしてもらうと、伸びなかった膝がぐっと伸びるようになりました。痛みもなくなったと言われます。よかった。

こうして膝の問題に膝もかかわっていることが分かりました。確かに、膝の問題の原因は主に骨盤や腰、足首にありますが、それだけを不当に強調することなく、膝が原因の場合もあると考えてみて、問題を解決できたわけです。

どんなことにしても、部分の真理を度外れに全体に当てはまるとすることは誤りになりますし、全体の真理を度外れに部分にも当てはまるとすると誤りになります。つまり膝の原因は膝にあると強調しすぎるのも誤りだし、膝の原因は膝にないと強調しすぎるのも問題だということです。何ごとによらず、あまり一方に偏った考え方は避けるのがよい。これが今回の結論です。 → 膝痛(8)に続く

( 2014. 05 初出 )