足裏たたきの効用

なかなか気持ちがいい。足裏の土踏まずの部分を握りこぶしでトントンたたく。それだけの簡単なことですが、これが色々な効果を発揮します。

hyssop
ヒソップ

下腿を緩ませる

足裏をたたくと、どんな良いことがあるのでしょうか。試してみましょう。腓(ふくらはぎ)をあちらこちらと押えて、どれだけ痛みを感じるかを調べます。多くの人が腓(ふくらはぎ)の筋肉をぐっと押さえると痛みを感じるでしょう。「痛み」というほどでなくても、凝った感じ、筋肉痛の感じがあるはずです。その感じを覚えておいて、つぎに足裏の土踏まずのあたりを握りこぶしでトントンたたきます。とりあえず100回たたいてみましょう。100という数字に特に根拠はありませんが、あくまで目安です。私のたたき方なら1分間に200回ほどたたけますから、わずか30秒でオーケーです。

100回たたいたら腓(ふくらはぎ)を押えてみます。どうですか。緩んでいますか。痛みが少しましになっているでしょう。あるいはツッパリ感が少なくなっているかもしれません。100回では不十分と思ったら、あと100回続けてみましょう。それからもう一度ためしてみます。300回ほどやると、かなりよくなるようです。痛みがかなり軽減しています。

ですから、長距離を歩いて脚がつかれている時に有効なことが分かります。足が冷えて困る、という人には血行の改善効果が感じられるかもしれません。

足裏から外くるぶしの下を通って、腓(ふくらはぎ)の外にある腓骨に沿って上にあがり、膝の下までつながっている長腓骨筋という筋肉があります。足裏たたきをすると、この筋肉が緩みます。これが緩むと、腓(ふくらはぎ)の外側が緩みますから、この部分が突っ張って困っているとか、脚がよくツルという方が一番に足裏たたきの効果を実感できるはずです。

足裏にある筋肉は、これだけではありません。他にも解剖図などで探せば、短趾(たんし)屈筋、足底方形筋などという筋肉があり、踵(かかと)につながっていることが分かります。踵には、ふくらはぎの腓腹(ひふく)筋・ひらめ筋がつながっていますから、ふくらはぎが緩む効果もあるはずです。現に、しゃがめない人に足裏たたきをしてもらうと、少し状況が改善します。続ければ、しゃがめない状況が改善して、しゃがめるようになってくるはずです。また、しゃがめる人でも足裏たたきをすると、アキレス腱の伸びがよくなって、足首がうまく動くようになります。足先を反り上げた時のアキレス腱がうまく伸びない感じが消えているはずです。

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ディル

血圧を下げる

以上のことから、足裏をたたけば下腿が緩んでくるという関係にあることが分かります。とくに腓(ふくらはぎ)の後ろにある腓腹筋は第2の心臓とも言われるところで、この腓腹筋が伸び縮みすることで、足の静脈血を上に返す働きをしています。足裏たたきをすると血液の循環がよくなる、といわれていますが、それは確かでしょう。

足裏たたきの効用として世上よく言われているのは、まず血圧を下げることでしょう。一回だけ足裏をたたけば、すっと血圧が下がるというほど劇的な効果はないが、続けると確かに効果があるようです。どのくらいたたけばいいのか。これには諸説あり、100回というのが目安になっていますけれど、5分というものもある。中には2時間たたくという豪傑もいるようですが、どれが一番かは、人によってからだの条件が違うでしょうから、それぞれ試してみるのがいいと思います。

なぜ足裏をたたくと血圧が下がるのか。普通は、足裏に多くのツボがあり、それを刺激するから、ということになっているようです。そういうこともあるのでしょうが、ここでは別のことを考えてみたい。

足裏たたきの効用は、これだけでなく、下腿からさらに上へと影響があると考えられます。下腿の部分が緩むため、大腿部の筋肉も緩みますから、骨盤の動きがよくなってくる。すると、全身の固さがとれてくる、という関係が生じるでしょう。例えば股関節が柔らかくなって、硬い脊柱起立筋が緩んできます。こうして全身が柔らかになってくれば、血圧を高くしておく必要がなくなりますから、しだいに血圧が低くなってくるのは、大いに考えられることです。

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ユリ

骨盤の安定

足裏たたきのもう一つの効用は、骨盤の安定ではないかと思います。腰痛がある人をみていますと、両足首に左右差のある場合が多い。そのために、足が上をひっぱる力に左右差が生れます。すると、骨盤を下から引っ張っている力が左右均等ではなくなり、骨盤が傾いたり捻じれたりする原因になり、腰痛を引き起こす原因の一つになっています。

誤解のないように言っておきますけれど、骨盤というものは決して固定した動きのないものではありません。身体を動かすたびに動いているものです。ですから静止した左右対称が大切だというのではなく、左右に均等に動ける骨盤、少々過大な動きをしても、うまくそれを吸収して歪まない骨盤がいい骨盤、安定した骨盤といえるでしょう。これが大切なポイントです。そのためには、柔らかい筋肉を持っているのが望ましい。

腰痛持ちの人も、足裏たたきを続ければ、何らかの効果が期待できるでしょう。足裏をたたいた後、できれば50回ほど足首を上下させて、ふくらはぎの筋肉を伸ばしたり縮めたりしておけば、静脈血の回収がうまく行われて、さらに効果を高めるのではないかと思います。お試しください。

( 2010. 10 初出、2011. 06 改訂 )