風邪と足湯
これから風邪が多くなる季節です。周りでも風邪を引いているという声を聞くようになりました。私自身の先日の体験を一つ。
熱い湯で足湯を
去る11月24日から3日間、整体の集中実習(遠隔地コース)を朱鯨亭で開きました。その前日23日の夕方、操法をしている時から何だか身体がだるくていけません。頭が重い。腰のあたりがやたらに重い。終わってからも、しんどくてごろっと横になる始末。これは一体全体どうしたのだろうと、しばらく考えをめぐらせていました。ふと気づいたのは、先日、娘が上海へ行ったこと。そのあと風邪だと言っていたから、中国産の風邪を貰ったのだろうか。私が風邪をひく時はのどに来ることが多いので、こんなにしんどいのは絶えてないことです。
さっそく妻に電話して夕食はいらないと告げ、何とか立ち上がって、いつもは2キロあまり歩くところをバスに乗って帰宅しました。足湯をしたいというと、妻がバケツにたいへん熱い湯を入れて持って来た。これでは足をつけられません。水でうめて、手をつけて何とか我慢できる熱さまで温度を下げ、両足を足首までつけます。
手は普段から色々な刺激に慣れていますから、少々熱くても入れていられますが、足はそういう温度に慣れていません。ですから足はやけどをするのではないかと思うくらい、たいへん熱く感じます。これで5分間。温度は測っていませんけれど、たぶん摂氏43度以上はあったでしょう。
熱を出すほうがよい
足を湯から出してみると、両方ともピンク色に染まっていい色です。野口さんが『整体入門』などに書いている方法は、このようにして両方の色を見比べ、少し色が薄いほうをあと2分ほど湯につけるというものです。しかし、いま私の足は両方とも同じ色に染め上がっていますから、これでOKでしょう。
タオルで両足の指のあいだまでよくよく拭いて、すぐに布団を敷いてもぐりこみます。すると、じわっと汗が出てきた。体温計で熱を測ってみると、つねの体温より高い。熱が出はじめたわけです。野口さんも書いていることですが、この時、熱が出る方がいい。熱を出すことで身体が自然に自分のからだの調整をしているのですから、解熱剤の入った風邪薬を飲むなどは下の下、こじらせるだけです。これについて詳しくは野口晴哉『風邪の効用』(ちくま文庫)をお読み下さい。
ふとんの中で、明日の講習をどうしよう、ひょっとして朝までに回復しなければ、山形や熊本など遠いところからはるばる来てくださるので、交通費やホテルのキャンセル料を負担して帰っていただくしかないかもしれない、等とつまらないことを考えながら眠りに落ちました。
一食抜く
さて翌朝、目覚めると、すっきりとして昨日の頭の重さも熱もありません。汗で湿った寝巻きを脱いで、普段と同じように歩いて朱鯨亭に行きました。久しぶりに来られた方が「お元気ですか」と質問されるので、「まあ何とか」と曖昧な返事。でも問題なく講習を進めることができました。その後、今日に至るまで、まったく何の問題もおきていません。
というわけで、手が浸けられる程度、足では熱すぎると感じる程度の温度で5分ほど足湯をすること、一食ぬくこと、この二つがポイントでしょうか。それから足湯をする時は風呂に入らないこと。風呂に入ってしまっては、足とからだとのせっかくの温度差が台無しです。この温度差に意味があるらしい。食を抜くのは野口さんの記述にはなかったと思いますが、風邪と小腸の関係を詳しく解明した本もあるほどです。風邪と小腸とは密接な関係にあるようです。消化器を休めるのも大切なポイントではないかと考えます。ただし、以上は「野口式」足湯ではなく、あくまで「朱鯨亭式」足湯です。
( 2008. 11 初出 )