甲が痛い
足の甲が痛いと訴える人がいます。足の付け根にある細かい骨の一つ、またはいくつかがズレを起こしているに違いありません。
足の骨のズレ
月に一度の割合でかよって来られる女性Uさんが、いつもと違って足首が痛いとおっしゃる。さっそく調べてみると、足首の親ゆび側、やや指さき寄りにある舟状骨(しゅうじょうこつ)という横に長い骨がズレています。
舟状骨の位置のよく分からない人は、手にも舟状骨があるので、手と足を間違えないように画像検索をかけてみてください。場所は探し出した図を見てもらうとしましょう。
足の親指側のへりを辿っていくと、少し出っ張りを感じる所があるでしょう。それが舟状骨の端で、土踏まずの上あたりです。人によって違いがありますが、かなり出っ張っている人もいるでしょう。ほとんど出っ張りを感じない人もいるかもしれません。出っ張っていても、普通は押さえて痛くありません。それが正常な位置だからです。
舟状骨が出っ張って
Uさんの舟状骨はこの出っ張りがかなり大きく、そこを押さえると痛いといわれます。それもかなり強く痛むらしい。私が押さえると顔がゆがみますからよく分かります。これはひどくズレているらしい。逆の側、つまり小指に近い側から反動を使って戻すと、痛みが和らいで来ました。でも、出っ張りの周辺をもういちど押さえてみると、やや下寄りのところがやはり痛いという。そこで今度は、やや上の方から反動を使ってみました。これでほぼ痛みが消えました。
後からUさんにもう一度どんな様子だったかをメールで尋ねてみました。痛くなった理由はわからないそうで、
── 歩いていると痛い。ジーーンって感覚でした。それが始まりです。歩いている時だけか?って言うとそうではなく、座っていても足を伸ばしていても痛い時は痛い。四六時中痛いのか? そうでもありません。何かの拍子に痛い。歩いている時や立っている時に痛いと感じる事が多いです。先日の施術の後は一度痛いと思っただけで今は大丈夫です。
後で痛みが出たのは、おそらく次のようなことではないかと想像します。足には図を見れば分かるように、数多くの小さな骨が集合しています。ですから、一つの骨が歪むと、隣り合っている骨も歪む可能性がある。終ってから歩いてもらって確認しましたから、一応その時は歪みが消えているように見えたとしても、まだどこかに微かな歪みが残っていたのだろうと思います。
距骨がかなめ
足の甲が痛むのは、舟状骨の歪みだけではありません。他にも、中足骨が上がっているとか、三つの楔状骨のどれかが上がっているとかの場合があります。場所によって対処法が少しずつ違います。しかし基本は、痛む点(圧痛点)と正反対の点(対蹠点)からぐっと押さえて、ぱっと力を抜くという反動法を使うことです。これで簡単に解決しない場合は、対蹠点に指を当てて愉気をしてみてください。
ただし、どの場合にも最後に距骨(これも足の骨の図を探してください)の周辺の状態を確認すること。これが大切です。それほど距骨は足全体のかなめの役割をしています。(距骨の操法については、「操法テキスト」のページにテキストの実例をpdfファイルで掲載していますから、それを参照してください)
経絡の考え方から、このような方法とは違った対処法もあるでしょう。ただ、人体のつながりは、まことに不思議なもので、上記のような方法で対処すると、他の症状も消えることがあって、経絡にも影響を与えるのだろうと想像します。経絡に刺激を与えて問題を解決するのが鍼灸などの方法ですが、逆に経絡に関係する所の歪みを改善すると、経絡に刺激を与えるのと同じような効果が出るのではないでしょうか。
( 2009. 09 初出、2016. 01 改訂 )