両足の釣り合い

歩くと足が痛いのは何がどうなっているからか。このテーマについて考えてみます。

abelia
アベリア

歪んだ足で

夏は長く歩くのがつらくて止めていましたが、再開しました。「西高野街道」という大阪府の堺市から高野山へ向かう街道です。9月初めに第1回。こんどは2回目。南海高野線の「北野田」から「河内長野」まで歩きました。地図の上では約10キロとなっていますけれど、3時間40分ほど歩いたので、実質は14キロほどでしょうか。

歩き始めると何だか足が少し痛い。これは楔状骨(せつじょうこつ)だろう、直してから歩こうか。そう思う一方でこのまま歩いたらどうなるか、実験の機会だ、とも思います。いつもこんな機会があるわけではありませんから、実験に取り組むことにしました。

進むにつれて足の痛みの場所が少しずつ変わりました。初めは左足だったのが、やがて右足も痛くなってきた。といっても違和感がある程度で、激痛が襲ってくるわけではありません。まあいいか、このまま行こう。痛みの場所が右になり左になり、ときどき変わります。これは足が頑張って全身の釣り合いを取りながら歩いてくれているんではないだろうか。

jizo
地蔵菩薩

地蔵菩薩の真言

街道のあれこれを書くと興味深いことも数々ありました。一つを取り上げておきます。先日「地蔵菩薩の真言」について書き、顰蹙を買ったことは記憶されていることでしょう。その地蔵さまが街道のあちこちに置かれています。中には脇に真言を書いておいてあるところもあります。ところが場所により書いてあることが少しずつ違うんです。

「おんかかか びさんまえい そわか」
「おんかかみや さんまえい そわか」
「おんかか かびさんまえい そわか」

なぜこんなことになったのか。恐らく伝承されて行くうちに変ってきたのでしょう。書いた人の宗派によって少しずつ違うのかもしれません。元はどれが正しいのか、と言った議論は詳しくないので、書かないことにしますけれど、口伝えによって伝えられて行くうちに変って行くのは民話の伝承などと共に面白いと思いました。これまで数百年とか千年とかの単位で周辺の人々が地蔵さまにお参りして来た歴史が潜んでいますね。今でこそ真言を唱える人は少ないでしょうが、昔は通りがかりの人が立ち止まり、口の中で唱えて立ち去る、というのが普通だったのかもしれません。

mukuge
むくげ

背骨が骨盤を助けている

朝早く家を出たので、河内長野に着いたのが正午でした。地方へ行くと、ショッピングセンターが街の中心で、昔ながらの商店街はシャッター通りというのがお決まりです。商店街で食べ物屋を探したところ中華料理店が一軒あったものの、昼なのにお客が入っていません。結局はショッピングセンターの中の蕎麦屋にはいることになった。対照的にここはめちゃくちゃにはやっている。相席をお願いと言われるほどでした。

こうして家に帰って翌日、いつもは少々で脚が痛くなることはないのですが、今回は脛骨(すねぼね)の横についている筋肉がひきつって痛い。これが実験の結果です。歩いて筋肉痛になるのは、両足の釣り合いが悪いからだったに違いない。歪みのために筋肉が余計な大活躍した。

足には多くの骨があります。確か片足で26個ほどあるはずです。なぜそんなに複雑なのか。そう考えてみれば、やはり左右の釣り合いを取るためだろう、という結論になります。足が痛いというのは、必死に釣り合いをとろうとする姿であると感じられました。いじらしい足の骨たちよ!

ではどこに問題があったのだろうか。必死に釣り合いを取らなければならぬような事態になったのはなぜか。私の考えでは、骨盤の傾きやねじれを支配している腰椎ではないかと思います。骨盤が傾いたりねじれたりすると、体重を骨盤に渡している腰椎が歪んできます。背骨というのは、全身の支柱であるとよく言われますが、それだけではない。骨盤の歪みを補正する器官でもあると考えたほうがいいのではないか。背骨が歪むことで左右の歪みを補正しているんです、多分。

とすると、無闇に背骨をいじって直そうと考えるのは正しくありませんね。むしろ背骨にかかる歪み力をうまく吸収できる状態にしてやることが必要だという結論になります。歩いていると骨盤はつねに揺れてねじれて傾きながら進んで行きます。それにつれて背骨もねじれ揺れ傾きながら進んで行きます。この動きが滞りなく進んでいれば、どこにも問題がない。しかし動きが悪くなると、あちこちに故障が出てくるわけでしょう。足が迷惑します。背中でうまく釣り合いを取ることができないから足が頑張るしかありません。

mamakonoshirinugui
ままこのしりぬぐい

腰椎の2番など

私の足はそういう状態になっていた。その結果、脚に筋肉痛を引き起こしてしまった。歩く時は腰椎をしっかり動く状態にしておかないといけません。そのためには寝床体操の2番、つまり捻りの運動をしておくのがいいだろうと思います。あるいは腰椎を変化させるのであれば、側屈にかかわる2番の骨が中心になるのではないかと思います。

腰椎の2番は、肋骨の下の端のすぐ下にある骨です。この骨を左右から少し強めにつついて見て、硬いなと感じるのはどちら側かを観察しておきます。そうして硬い感じの側と反対の手の中指を背中に回して、腰椎の突起の上にじっと軽く当てておく。2分から3分そうしていると、左右の硬さが揃ってくるでしょう。そういう操作をすると左右への動きが均等になる。

膝痛などについても同じことが言えます。両足の左右の釣り合いが悪いから背骨の動きをよくする必要がある。特に腰椎の1番~3番という上の方の骨に注意することが大切だと思います。

最後に。脚の筋肉痛になったらどうすればいいか。手の小指の甲側。小指の中央のラインを反対側の手指でそっと軽く第2関節から第1関節に向けて撫でることです。これを何度か繰り返せば、軽くなるでしょう。少々つらくても実験はやってみるものです。いろいろなことが分かりますから。

( 2013. 09 初出 )