足裏が痛い
靴工房の奥で、足の甲が痛いという青年が何かをやってもらっていた・・・
靴工房の奥で
「なんでそんなとこ痛いんや」と関西人なら言いそうな場所に痛みの出てる人が結構いる。問題は足の裏です。普通はあまり痛みの出ないところです。肉厚ですしね。
まあ、少し私の無駄話に付き合ってください。先日、別の話題でも登場した奈良町のK靴工房。用があって戸を開けるとKさんが奥の部屋から顔をのぞかせて「あ、ちょうどよかった」て、何が?
奥の部屋で何をしてるんか、と思ってのぞくと、高校生の男子が寝ている。「左足が痛い言うので今みてるとこなんです」とKさん。《また、かいな。人の足を直すのもエエけど靴も直さんとね》と心の中で。
足の骨がボコボコに?
とにかく、さっそく私も上がり込んで彼の左足をみる。土踏まずのあたりが痛いといいます。《そんなところは、普通はあんまり痛くならんところや》と思いながらも、足に触れてみる。これは《舟状骨が下って反対に立方骨が上に上がっているパターンや》と思って、立方骨を触ってみると、確かに硬い。
そこで、舟状骨を挙げ、立方骨を下げる操法を、共鳴を使ってやってみます。つまり、左手の小指を二本の指でサッと逆方向に撫でたわけです。立方骨はこれで確かに緩みました。でも土踏まずを押してみると、今度は別のところが痛いという。「そうなんです。さっきから痛いところがあちこち変わるんです」とKさん。
そやけどKさん、私のことを彼に紹介してへんから、《変なおじさんやなあ》と高校生は思っているに違いありません。そらそうでしょう、いきなり人の足をつかんで手を出させるんやから、おかしな人に決まってる。
甲高になっている部分にある骨が楔状骨(せつじょうこつ)。このところを押さえてみると「痛い」といいます。すると何かこの足は、舟状骨のあたりが下って楔状骨のあたりが上がっている、というややこしいことになってるわけでしょうか。骨の名前が色々と出てきますから、複雑に感じる人は、足の骨のイラストをどこかで探しだした上で読んでください。
痛みが移動する?
どこかを触ると、また別のところが痛いらしい。聞いてみるとバドミントンをしているという。打ち込む時の形を考えてみると、右脚がうしろ、右腕もうしろで、羽根を打つと、左足にぐっと重みがかかります。さすれば左足が痛いのは、一瞬で力がかかり過ぎているからに違いない。
痛みがあちこち移動する人を時々見かけますが、それは移動しているのではなくて、ぜんぶ痛いのに、一番つよく痛いところだけを感じるので移動しているように思うだけではないか、と思います。
結局、あちこち触ったあとで、足の甲をぜんぶ押さえて、ぐっと力をかけてパッと放すようにしました。すると、痛みが弱くなって全体的に広がったという。考えてみれば、打ち込む時に左足にグッと力がかかるので、足全体の骨が下から押さえられて、じわっと下がって、広がって行くに違いない。
そのためにどの骨も少しずつ下がっている。足の骨は甲側が広く裏側が狭くなっているので、一つの骨が下に落ち込むことは、めったにありませんから、全体として下がった形になっているのでしょう。一つ一つを直すのは難しい。
これは少し練習を休んで、養生した方がエエとアドバイスしたのですけれど、まあ止めんでしょう。スポーツでどこかを傷めた青少年は、ほとほと難しい。たいていは言うことを聞いてくれません。どうすればエエのか、何か決め手はありませんか。まあ痛くなった本人自身がよくよく考えてみることでしょうかね。
( 2013. 11 初出 )