足首がおかしい
歩いている時に、足首がおかしくなることがあります。痛いというほどでもないけれど、何だかひっかかるような感じがあって、スムーズに歩けない。そういう経験はどなたにもあるでしょう。たいていは、我慢して歩いていると次第に直ってきて、そんなことがあったのも忘れてしまう、ということになります。でも、ずっと違和感が続けば、そうも言っていられません。
複雑な足首
ここで足首の骨について詳しく書きだすと、足首の骨が複雑であることもあって、なかなか分かりにくくなってしまうでしょう。骨の名前を羅列してみると、まずかかとのところに「距骨」と「踵(しょう)骨」、その前に「立方骨」と「舟状骨」、さらにその前に3個の「楔(せつ)状骨」(解剖学では、けつじょうこつ)というわけで、合計7個の小さな骨が集まっています。今回は、そのうち立方骨と舟状骨の二つに限って取り上げることにします。
この二つの骨は互いに補い合う関係になっていて、一方が上がると他方が下がるという動きをします。立方骨が上がると、舟状骨が下がることになります。逆に立方骨が下がると、舟状骨が上がります。足首が何だかおかしいなあ、と感じる時は、この二つの骨が互いにズレていると考えて対処するといいでしょう。
全身と部分の対応
では、どうすればいいか。これを文章だけで表現するのは難しいのですが、何とかやってみましょう。まず基本的なことがらから始めます。足首を直すといっても、足首の骨を直接さわるわけではありません。いつものように手の甲の共鳴を使います。つまり手の甲が、足の裏や耳と同じように全身を表現していて、甲に全身の共鳴区が存在していますから、そこを触ります。
なぜ手の甲と全身とが類似した形に共鳴の関係になっているのかは分かりません。私が想像するのは、次のようなことです。アメーバのような単細胞の生物では、どこか一か所をつつくと、それに反応して細胞全体が動きますね。細胞のどこかに刺激が与えられると、それに反応して細胞が動く ── これが生物の基本の原理でしょう。
人間のような多細胞の生物では、細胞の働きが分化して、脳は考える、腸は消化する、というように機能が分かれています。脳が消化することは、まずないでしょう。しかし腸が考える、という説はあるみたいです。もともとは、脳も腸も、同じ一つの細胞から分かれていったものですから、そこに共通する性質があって一向におかしくありません。全身と、足裏・耳・手甲といった身体の一部とが共鳴の関係にあるのは決して奇妙なことではないのでしょう。たとえば手甲に刺激が与えられると、それに対応したところが動くというのは、不思議ではない、と思います。
で、足首は手甲のどこに対応しているのか。小指の第一関節です。左足は左の小指、右足は右の小指に共鳴区があります。少し詳しく足首の骨をみると、立方骨・舟状骨という二つの骨は、足首の少し指先側にありますので、共鳴区も正確にいうと、第一関節の少し指先側のあたりであることがおわかりになるでしょう。実際には第一関節と爪の生え際の間が二つの骨の共鳴区です。そして、立方骨は小指側、舟状骨は親指側にありますから、立方骨はこの部分の小指側、舟状骨はこの部分の親指側にあることが分かりますね。
もっと正確な位置をいいましょう。小指の爪の左右の線を、実際はやや曲っていますけれど、指のへりに平行な直線であるとみなします。この直線を小指の第一関節まで延長します。すると、小指の爪の生え際から第一関節までの間のところに、指のへりと平行に、二本の平行線が引かれることになります。これが立方骨と舟状骨の共鳴区です。
交差操法
さて、ここにどんな操作を加えるのか。立方骨がやや上に飛び出し、舟状骨がやや下がっていると仮定します。何を調べれば骨が上がっているとか下がっているとかが分かるのか。圧痛があれば、そちらに骨がズレています。そこで、立方骨の上を少し強めに押してみると痛みがあります。また舟状骨の下、つまり土踏まずのやや踵寄りを少し強めに押してみると、やはり圧痛があります。このようになっていれば、立方骨が上がり、舟状骨が下がっている状態であることが確認できます。
そうすると、立方骨を少し下げてやればよく、舟状骨は逆に少し上げてやればいいことになります。共鳴を使ってこの操作をやってみましょう。立方骨の共鳴区は、手前から指先方向へ、逆の手の爪先でかすかに擦ります。舟状骨の共鳴区は指先から手前方向へ、かすかに擦ります(骨の位置関係が逆であれば、これと逆の操作をすればよろしい)。そして、しばらくじっとしている。時間にして30秒も待てばいいでしょう。足首を動かしてみると、違和感が改善しているはずです。
このズレをまったく感じていない人もいますが、現実にはかなり多いのではないかと思います。感じていない人でも、この操作をすると、足首の動きがよくなります。逆方向へ同時に動かすので、この種の操作を私は「交差操法」と呼んでいます。骨盤など、あちこちでこの種の操法が応用できるのではないかと、目下、研究中といったところです。
足首に付随して、まだ他にも操法がありますが、それを書きだすと、あまりに煩わしくなりますので、それはまたの機会とします。ややこしい説明を根気よく読んでくださって、ありがとうございました。
( 2010. 04 初出 )