ゴム紐症候群 (1)
世の中には「我が道を行く」という原則を貫いて生きている人がいますね。
『健康であるために』
マニキュアだとか指輪など、身に付けるものについてたくさんご意見を頂戴した時、『健康であるために──ゴム紐症候群について』という本を送ってくださった方がありました。決して新しい本ではなく、1970年代の古い本といっていい本でした。これを書いた見元(みもと)医師が我が道を行く人の一人だと、強く感じました。
見元良平(1917-1990)『健康であるために──ゴム紐症候群について』 (高知見元病院、1977年5月、1500円)
この中身について、私自身まだその正しさを検証できていません。ですからこれをご紹介するのは、まだ早いかもしれない。でも皆さんに知っておいてもらいたいという気持ちが強いので、取り上げました。
下着のゴム紐が問題
身に付けるものとしてマニキュア・指輪・ブレスレット・腕時計などが話題にのぼったわけですが、下着も立派な身に付けるものです。しかもこちらは男女に関わりなく身につけています。下着を身につけていない人はいないに違いない。(和服の人は正式には身に付けないそうですが)
それにゴム紐が付属しています。たいていの人が身体のどこかにゴムを身にまとっています。パンツであるとか、靴下であるとか、ジャージであるとか。自分の靴下にはゴム紐がついていない、という人もいるかもしれませんが、ゴム編みの部分をほぐして見れば分かります。繊維の中に極細のゴムが包み込んであります。ですからブラジャー等にもゴムが使われているでしょう。ボディスーツ・ガードルなども同じです。「ゴム紐」という表現が適切ではないとすれば「ゴム症候群」と呼び変えてもいいと思います。(メルマガの表題はそうしてあります)
同じく身に付けるものであっても、これらが問題になることは極めて少ない。昔、寝る時はパンツを履かないという健康法があった、と記憶している人がいるかもしれませんが、今ではそういうことをいう人もあまりいない。TVや健康雑誌でたまにそういう話題が取り上げられるのかもしれませんけれど、少なくとも私は知りません。
レイリー現象
問題の出発点は、「レイリー現象」(過剰刺激症候群、Reilly's Syndrome)です。ウィキペディアの「レイリー現象」の項目を読めば、どういうことであるかが分かります。この現象はほとんど知られていないと見えて、英語版のウィキペディアで調べても書かれていません。日本語版には、いくつかのことが書かれていますが、簡単にまとめてみましょう。
レイリー現象はレイリーという人が1935年に発表したものです。初めに紹介した本の見元医師の表現を引用してみます。
── 中枢であれ、末梢であれ、自律神経のどこかに強いまたは弱くても持続的な刺激が作用すると病的な自律神経反射をおこす。加わる刺激の種類には無関係である。(p.9-10)
もう一つ注意が必要なのはこの現象が「非恒常性」であることです。ウィキの「レイリー現象」の項目から引用します。
── 刺激によって起こる反応は非恒常性であって、生体の感受性、反応形式によって異なる反応が起こって常に等しいものではない。
つまり人によって感受性の違い、反応形式の違いがあって、違う反応が出る。常に同じ反応が出るわけではない、ということです。ゴム紐という伸縮性のあるものが持続して身体に接触していると、人により違う症状が出ることになります。見元さんが注意を促していますが、食い込むことが問題ではない。伸び縮みするものが持続して接触していることが問題である、ということになります。
では一体どのような症状が出るのか。本に表が載っていますが、あまり多いので、すこし表現を変えて抜粋し、書き出してみます。
── 消化器潰瘍、嘔吐、便通異常、大腸炎、痔、頻尿、血尿、背痛、腰痛、脚痛、側弯、動悸、たちくらみ、生理痛、子宮出血、免疫疾患、膠原病、自律神経失調、うつ、むくみ、筋萎縮・・・
これらの症状は見元医師が患者さんにゴム紐を取り除くように薦め、それで症状が改善したものです。バリウムを飲ませて撮った腹部X線写真が、多数載っていて、なかでも印象に残るのは、何かの症状を抱えている人の大腸が細くなってしまっていて、ほとんど写っていないことです。ゴム紐の刺激で消化管が細くなってしまっている。ゴムを除去して数週間または数か月後のX線写真をみると、消化管がきれいに写っています。パンツのゴム紐の刺激だけで、大変な影響が出ていることが歴然と分かる。 → 【続き】
( 2014. 02 初出 )