ある日の会話
マッサージに行ったら、どこかが痛くなったという人が時々います。何がどうなっているのか。
狭窄症の再発?
ときどき思い出したように来られるKさんから電話です。山好きのKさんには、脊柱管狭窄症という診断を受けて手術を受けた歴史があり、山歩きをすると、膝が痛くなったり、腰が痛くなったりすることがあるようです。
── もしもし、Kです。またお願いしたいんですが。
── どうされました? また膝ですか。
── 脊柱管狭窄症の再発やと医者に言われました。
── そうですか。膝はどうもないんですか。
── 膝やなくて、腰が痛くて。立ってるだけでつらい。
──そ うですか。残念ながら講座をやっているところでねえ。
―― お忙しいんですか。
―― 講座は休むわけにいきませんしね。
── 早朝でもいいですし、何とか。
── じゃあ、月曜日に講座が終わってからなら。夕方の4時すぎでもいいですか。
── 分かりました。その時間に行きます。
というわけで60歳代の男性、Kさんがいらっしゃいました。
奇妙な診断?
── この辺りね。手術の跡のすぐ下ね。
―― ああ、ここですか。
―― ベルトの辺から右の尻にかけて痛いんですわ。
── なるほど。そやけど、狭窄症でこんなところ痛いやろか。
── でも、医者がそない言うから。
―― 見立てがおかしいね。狭窄症と違うようや。
―― えらいこっちゃ、どうしよどうしよと思うてずっと悩んでましてん。
── なるほど。手術をもう一遍するのは嫌やしね。
── そうですねん。
── ふーん。そやけど、これは大したことないみたいですよ。
── えーっ。狭窄症と違う?
── これは多分、骨盤が少し右へ傾いて、仙腸関節が開いてるだけと違うやろか。
── そうですか。そんなら簡単に直る?
── それは、やって見んと分かりませんけどね。
整形外科で奇妙な診断を受けたんではないか、という印象をぬぐいきれません。
マッサージが原因?
―― なんで痛くなったか何か心あたりはあるんですか。
── それが、どうもこの頃、ちょっと歩いたら筋肉が疲れてくる感じでね。いつも行ってるマッサージがいっぱいで、安いとこに行ってみたら、こう仰向けで右足を折り曲げて、ぎゅっーと押さえてくる。脚がお腹の上にくるようにしてね。何もここまで強うせんでもええのになあと思うたんです。ひょっとしたら、あれと違うやろか。
── ははあ。そうですか。何か読めてきたぞ。そんな風に曲げたら、多分仙腸関節が開く可能性があります。その後すぐ痛うなったんですか。
── その後、用事で新幹線に乗って東京へ行ったんです。そうしたら東京駅で突然痛うなって来たんですわ。
── ははあ。ありそうなことや。新幹線の座席にじーっと座っていたら、何もなくても腰が痛い時がありますからね。さあ、これでどうですか。立ってみて下さい。
── うん。まだちょっと痛みはありますけど、だいぶマシや。
── やっぱり。そうしたら、こうしてと。はいもう一遍立ってみて下さい。
── ああ、だいぶマシです。初めの痛みが10としたら、もう1くらいや。
── そんなら、これでどうだ。はい、立ってみて下さい。
── ああ、もうほとんどOKです。
── よかった。
まあ、こういうことが何度も起きないように願いたいですね。
( 2012. 02 初出 )